2015 Fiscal Year Research-status Report
近代漢語のヴォイスを表す構文に相互作用する述語動詞の複合構造の変性に関する研究
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15K02511
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤田 益子 新潟大学, 経営戦略本部, 准教授 (10284621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代漢語 / ヴォイス / “把”構文 / 受動・使役構文 / 動詞 / 補語 / 複合化 / 語義指向 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、語法化に伴い漢語のヴォイスを表す中核的存在となり得た“把”構文、受動・使役構文が機能的構文構造を確立する過程で、相互発展を助長する要因となった述語動詞の複合構造の変性に関して、形態と意義の両面から解析をし、通時的変遷研究を行うものである。 平成27年度はその第一段階として、「“把”構文の処置義を構成する述語動詞の複合構造」について、動詞の複合化の進展と処置義を表す機能構文の発展との相互関係の考察を行うことを目的とした。 分析に際しては、動詞の複合化の形態に関わる文中の名詞成分として想定可能な「主語や賓語の文における語義上の役割」である(1)施事、(2)受事、(3)当事、という3つの観点からアプローチをした。 同時に、述語動詞の複合形態については語のレヴェルに分解して考えている。例えば、V1v2v3という動詞の複合構造において、各動詞成分と名詞成分との受動関係が一致しているとは限らない。つまり、①V1の動作行為に係る名詞成分との受動関係、②v2の動作行為に係る名詞成分との受動関係、③v3の動作行為に係る要素との受動関係について、個々に考える必要性がある。 手順と方法については、動詞の複合化の進展と処置義を表す機能構文の発展との相互関係についてデータの収集を行い、上記の観点に基づき分析を進めた。その際、意味の重心の後傾にも注意を払った。そして、これらの研究を進める過程で、新たに「語義指向」に基づく分析が必要であるという考えに至った。そこで、動補構造における語義の指向性についても考察を進めた。補語の種類と用例数は膨大であることから、まず、近代漢語において急速に発展を遂げた様態補語構文において、同じ文構造でも述部の動詞と補語成分がそれぞれ異なる文成分へ意味的方向性を示すことを明らかにし、形態論と意味論の両面からそこに現れる特異性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画上の分類項目としては当初の予定通り進めているが、新たに語義の指向という分析方法の重要性に気づき、その問題について、当初予定していなかった新規のデータ収集や、検証を行い、論文をまとめたりしていたため、今年度の該当項目の整理状況にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、第二段階として、「“把”構文の致使義を構成する述語動詞の複合構造」というテーマで、動詞の複合化の進展と致使義を表す機能構文への発展との相互関係について考察を行う予定である。 手順と方法については、第二段階は、第一段階からの継続した分類項目における発展的研究であることから、従来の方法論を踏襲する。 これまでの研究では次の点が明らかとなっている。“把”構文は元来、処置義を中心に発展してきたが、時代が下るにつれて致使義の構文に急速な増加傾向が見られる。動作の結果の生じるプロセスに注目して機能義を捉えると、この2つの相違の分岐点は「対象に何かをすることで、事が運ばれ、ある状態や結果を得る」、或いは「因果関係があってその成り行きの延線上で何かが起こり、ある状態や結果が引き起こされる」という問題にあると考えられる。S+“把”+N+Vp(V、VC、VN、V得C)という基本構文において、NとVpの関係によって“把”構文の表す機能義に違いが生じることから、この機能義の分化に述語動詞の複合化、補語の発達が大きく影響しているものとみられる。しかし、現段階で、“把”構文の機能義の移行には、具体的に動詞の複合化が進展するどの過程で、何が強く作用したのかという核心的な部分が明白になっていないことから、この点を重点的に調査する。 また、平成27年度の第一段階において、新たな分析方法として加えた「語義指向」という観点からも、更に動詞と補語成分の関係性について考察を深めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
推進中の研究に対し、国際学会での発表の招聘があったことから、旅費の補填が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費は、航空運賃、宿泊費用などに当てる予定である。
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