2015 Fiscal Year Research-status Report
カフカース諸語とロシア・ソヴィエト言語類型論の研究
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15K02513
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳沢 民雄 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (80220185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カフカース諸語 / ロシア・ソヴィエト言語学 / ウスラル / ヤーコヴレフ / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
カフカース諸語の研究を中心として、ロシア・ソヴィエト言語学の遺産である言語類型論を解明することを目的とする。具体的には2つの分野を解明する。 (1)音韻論の分野:ウスラルとヤーコヴレフの音素概念はカフカース諸語研究のなかでいかに研究されたのか。 (2)形態論・統語論の分野:メッシャニーノフを中心とする言語類型論者らのカフカース諸語の役割を明らかにするとともに、「段階理論」を解明する。 27年度の研究実績は次のようであった。 (1)音韻論の分野:ヤーコヴレフの手書きの草稿本である『カバルダ語の音声一覧表』(1923)を活字化し、これをデータベース化した。これを使って、ヤーコヴレフのカバルダ語の音声表記方法と音素確定方法を調査した。そして、意味弁別単位としての音素のヤーコヴレフの考えを解明した。恐らく、今までヤーコヴレフの上の草稿本は、その一部がロシアの『言語学の諸問題』誌に掲載されたことはあったが、これを全て活字化したことは世界で初めてだと思われる。このデータ資料を使うことによって、ロシア・ソヴィエトの音韻論の歴史解明に寄与できると思われる。 (2)形態論・統語論の分野:北西カフカース諸語とナフ・ダゲスタン諸語の能格性を調査した。特に、北西カフカース諸語においては、ウビフ語を中心として格表示を中心に調査した。ナフ・ダゲスタン諸語については、ウスラルの『チェチェン語』、『アヴァール語』、『ラック語』等の資料に基づき、ウスラルが能格構文をどのように理解していたかを明らかにした。このことはロシア・ソヴィエト言語類型論の歴史において、能格性がどのように解明されてきたかを示すために重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の通り、ヤーコヴレフの草稿本である『カバルダ語の音声一覧表』を活字化し、データベース化したことによる。これによって今まで歴史の中であまり触れることができなかった、ヤーコヴレフの音素論についての研究が進むことが期待できる。また、資料の入手がいままで困難であった、ウスラルのナフ・ダゲスタン諸語の著作を使っての実際の研究も、本研究を当初の目的の通りに進めている。これらの初年度の研究は次のメッシャニーノフを中心とする言語類型論者の「段階理論」を解明する鍵となろう。
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Strategy for Future Research Activity |
音韻論の分野については、ヤーコヴレフの音素論の形成と関連するウスラルの「音素」概念の検討を進める。特にウスラルの著作である『アブハズ語』と『チェチェン語』を中心として、ウスラルの音声記述と音素概念を調査する。それを踏まえて、ウスラルとヤーコヴレフの音素概念を比較し、どのような影響がウスラルからヤーコヴレフにあったかを解明する。形態論・統語論の分野では、27年度の研究を踏まえて、カフカース諸語の能格性に関する理論がメッシャニーノフを中心とする言語類型論者の理論にどこまで反映しているかを調査する。
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Causes of Carryover |
外国での調査を予定していたが、個人的な理由で調査ができなかった。そのために計上していた旅費が使用できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には外国での調査を行う計画であり、旅費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)