2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 豊 京都大学, 文学研究科, 教授 (30191620)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソグド語 / ペンジケント / ソグド人 / シルクロード / マニ教 / ゾロアスター教 / 中央アジア史 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度には,2度に渡ってソグド語が使われていた地域での現地調査を行った.一つはタジキスタンで,9月に首都ドシャンベの国立博物館が収蔵するソグド語の金石文を調査するとともに,タジキスタンの北部にあるソグド人の都市遺跡ペンジケントの発掘現場を訪問して,近年の発見物に関する情報を収集した.タジキスタンでは国際学会にも参加して,金石文に関する研究発表を行った.またその内容を年度内に論文にしてまとめ提出した. もう一つには10月から11月にかけて,キルギス共和国のチュー川流域での都市遺跡の発掘に参加した.ここでは,地元の考古学者たちが発見した土器のソグド語銘文を調査するとともに,自らも銘文が書かれている土器を採集した.未発見の資料がどのようにして発見され得るかを知る非常に良い機会になった. 3月にはニューデリーで開催されたゾロアスター教学会に参加し,欧米の研究者たちと近年の研究について意見交換を行ったが,申請者が数年来研究を進めているマニ教ソグド語資料の出版についても協議した. モンゴル高原に残されたソグド語碑文については研究の大きな進展はなかったが,先述のニューデリーでの学会でロシアの研究者から,エルミタージュ博物館が所蔵している19世紀末に作成された拓本の写真の提供を受け,ロシアの研究者との共同研究を行った.またエルミタージュ博物館にはこれらの碑文の古い拓本資料を今なお保管していること,またそれが閲覧可能であるという情報は,今後の研究のためには貴重な収穫であった. 年度末には,西安で出土したソグド人の墓で発見された漢文とソグド語のバイリンガルの墓誌についての申請者の以前の研究の改訂版を発表した.漢文版に関する東洋史の専門家たちの研究書の一部であるが,漢文版との比較が出来ることになったのは学界に対する貢献であると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいると考えるのは,ソグド語金石文が主に出土する旧ソ連領の中央アジアの2カ国を訪問することが出来たことと,そこで新しい資料を実見することができたからである.またモンゴル高原の碑文については,ロシアのエルミタージュ博物館に保管されている19世紀の拓本の情報を得られたのも,今後の研究に向けては大きな収穫であった.これはもう失われたと考えられていたからである.公開されてはいないが,申請者がロシアに行けば閲覧させてもらえるめどがたった. ただ不満があるとすると,やはり出土する資料は零細な上に,発掘される金石文特有の問題として文字の判読がきわめて難しく,必ずしも満足がいく解読ができないことである.その中では現在申請者のもとで研究しているウズベキスタンからの留学生が,サマルカンドで近年発掘されたソグド語銘文が残る封泥の写真を提供してくれ,そこに遊牧民の支配者の称号と人名を解読できたのは,この方面に対するささやかな貢献になった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も昨年度と同様に研究をすすめるつもりである.5月には,現在サマルカンドおよび周辺地域で発掘を行っている,College de France(フランス,パリ)のF. Grenet教授と共同研究を行う.フランス隊の近年の発掘の成果について情報が得られるであろう.パリでは申請者の最近の研究成果について,授業形式で発表することになっている.そこでフランスの研究たちと意見の交換が出来るであろう.それを今後の研究に是非とも活用させたい. 今年度はキルギスに行くことができないかもしれないが,その場合でも,5月と8月に発掘を行う共同研究者の山内和也教授(もと東京文化財研究所,現在帝京大学教授)のチームの発掘によって新たに得られた文物に関する共同研究を12月に行う予定である. それ以外は,日常の業務の余暇を利用して既存の写真資料などから順次研究を進めていく.
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 近年の中国マニ教研究2015
Author(s)
吉田 豊
Organizer
唐代史研究会夏期シンポジウム
Place of Presentation
東京都新宿区 早稲田大学
Year and Date
2015-08-17 – 2015-08-18
Invited
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