2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲルマン語強変化動詞形態組織発展に関する比較言語学研究
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15K02520
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 俊也 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (80207117)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | strong verbs / preterite plural / Proto-Germanic / the Narten hypothesis / morphological conflation / PIE verbal system / preterite-present verbs / Osthoff's law |
Outline of Annual Research Achievements |
LVC 2017年度大会(2017年5月27日山口大学熊野荘にて開催)で、"Osthoff's law in Germanic and some aspects of its relative chronology" と題する論考を、英語により口頭発表した。前ゲルマン祖語期(the pre-Proto-Germanic period)に適用されたと考えられるオストホフの法則(Osthoff's law)と呼ばれる母音短化の音法則が、ゲルマン祖語期の動詞体系生成にどのように関与したか、経験的資料を注意深く観察することで、明らかにしようとした論考となっている。この音変化の相対年代として、「オストホフの法則の適用→強変化動詞の過去形形態の確立」という図式が成立する可能性が高いことを論じた。(また、過去現在動詞の現在形形態の確立は、オストホフの法則の適用以前に行われた可能性もあることを論じた。) 『言語研究』(日本言語学会)152号(2017年9月発行)pp.89-116に、「ゲルマン語強変化動詞および過去現在動詞IV, V類に見られる形態的差異について:Schumacher (2005) 論考の批判的考察と形態的混交からの提案」と題する論考を公刊した。強変化動詞IV, V類の過去複数形が語根の母音が長母音となる形態を取るのに対して、過去現在動詞の現在複数形がゼロ階梯母音を反映した形態を示すという事実は、従来の説明図式からは首尾一貫した説明を与えられなかった。本稿はこのような現象に対し、「形態的混交説(morphological conflation theory)」の枠組みによる新たな説明図式を、詳細に渡って提案したものである。 研究テーマに関する新たな論考を萌芽的に口頭発表し、またこれまで口頭発表した論考について、細部をより詳細に考察した形で公刊することで、研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲルマン語強変化動詞の歴史的発達のメカニズムを解明するために、ゲルマン語資料に残るこれまで必ずしも着目されなかった特異な現象を経験的な証拠として、発達過程の再建を堅実に進める努力を継続している。 このやり方に沿って、今後、強変化第VI類、第VII類動詞の発達についての説明理論の構築を行い、ヴェルナーの法則適用有無の分布、オストホフの法則との相対年代の確定等の観点を特に用いて、論考を進められると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行って来たように、ゲルマン語資料に残る経験的証拠を十分に活用して、ゲルマン語強変化動詞のシステムがどのように発達したか、従来の論考とは異なる新たな説明モデルを構築できると考えている。経験的資料に裏付けされた新たな説明理論を、「形態的混交」仮説の立場から、継続的に構築する予定である。
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Research Products
(3 results)