2015 Fiscal Year Research-status Report
新規コーパスを利用したフィラーと話法の分析に基づくテクスト談話構成の日仏対照研究
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15K02522
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高垣 由美 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60253126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テクスト / 文章構成 / コーパス / 舌打ち / 親族名称 / 遂行性 / discours / histoire |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,テクスト談話構成の日仏対照研究のうち,フランス語に関する部分を中心に検討した。 書き言葉に関しては,Jean-Michel Adamの最新の著作La linguistique textuelle(テクスト言語学)では,フランス語の時制の分布を説明するために,Emile Benvenisteが発話レベルに関して提唱したDiscoursとHistoire(=Recit)の対立を発展させ,発話レベルを4つに分けている。本研究では,このAdamの4分法が,時制のみならず,話法に関連する他の言語現象の説明にも使えることを証明した。その中でも,遂行性が特に高い名詞である親族名称が,呼びかけとしてではなく,文の必要不可欠な要素として使われた時に持つ多義性に注目した。親族名称の指示対象の持つ多義性の分布は,Adamの発話レベルの4分法で説明できることがわかった。 話し言葉に関しては,予定していた以上の対面調査を国内外で実施できた。特にフランスと日本の研究協力者のコラボレーションがうまくいったおかげで,フランスで約1ヶ月をかけて10件以上のインタビュー調査を行うことができ,来年度の目標を先取りできた。またフランスで最近公開されたオルレアン大学の有名な話し言葉コーパスESLOを用いて,フィラーに近い役割を果たすと思われる舌打ち音の分布と生起率を調べた。その結果,従来の予想に反して,生起率は100%に近く,話し手の年齢・性別・社会階層に関わらず極めて広い分布を示していることがわかった。舌打ち音がフィラーに近い役割を果たしていると同時に,無意識である点において,完全にはフィラーと同じとはいえないこともわかってきた。 勤務先の予算や外部資金を利用して,フランスから研究協力者を招いて意見交換を行い,公開学術講演会を2回実施して国内の研究者との交流も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,研究の中間段階の成果発表のために平成28年7月開催のフランス国フランソワ・ラブレー・トゥール大学での第5回フランス語学世界大会および,ベルギー国リエージュ大学での国際フランス語教授連合の第14回世界大会の研究発表申し込みが,いずれも審査の上受理されたので,翌年度の旅費を前払いするため,前倒し請求を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の中間段階の成果を,平成28年7月にフランス国フランソワ・ラブレー・トゥール大学で開催される第5回フランス語学世界大会および,平成28年7月にベルギー国リエージュ大学で開催される国際フランス語教授連合の第14回世界大会で発表する。 書き言葉における名詞句に関する考察を深め,Adamの発話レベルの4分法で説明できる他の現象を考察する。その際に,フランスで公開されている大規模書き言葉コーパスを,これまで以上に積極的に使用する。さらに日仏対照研究の観点から,日本語についての考察を深める。話し言葉のフィラーに関しては,成果のまとめに入る。
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Causes of Carryover |
学会発表のための旅費で,海外での交通費のうち鉄道料金の支払いが年度内に間に合わなかったため,出張旅費の総額が確定できず,次年度の支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度4月に,遅延していた出張手続きを完了し予定していた使用額はすでに使った。
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Research Products
(11 results)