2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02525
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 光暁 青山学院大学, 経済学部, 教授 (30176804)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 声調 / 通時的変化 / 調類の合流 / 山東方言 / 時系列地図 / 地理言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年10月に中国語で行った「雲南漢語方言声調系統的地理分布和譜系関係」と題する口頭発表を日本語で「雲南中国語方言の声調体系の地理分布と系譜関係」として論文化し,神戸市外国語大学の『アジア言語論叢』に寄稿した(2016年12月に刊行済)。本論文は雲南省の中国語方言136地点について声調体系の地理分布を言語地図化し,おのおののタイプの間の系譜関係を推定したものである。 2016年11月には「20世紀以來漢語幾個方言聲調調値史」と題する論文が『漢語研究的新貌 方言、語法与文献 献給余靄芹教授』,香港中文大学中国文化研究所呉多泰中国語文研究中心より刊行された。これは雲南方言と関連する中国語諸方言における近年に生じた声調変化を追跡したケーススタディである。 2017年3月には主として山東方言について20世紀半ばから21世紀にかけて出された声調記述を1940年代・50年代・80年代以降の3つの時期について別々に言語地図化し,その間に生じた調類の合流のプロセスを細かに跡づける研究を行った。これは山東方言ではこのような短いタイムスパンにおいてかなり大きな声調変化が認められたため特にこの地域を選んだものであるが,時系列地図を言語地理学に導入するという意味で雲南を含む他の地域の研究に対しても貢献するところがある。そのプロセスにおいて,Franz Giet神父が1940年代に行った声調を始めとする音声特徴の言語地理学的記述が大きな意義を持つに至っていることを認識した。またこの30年来に中国で行われた方言調査の地点密度が非常に濃くなってきており,それを統一的に取り込む必要性も痛感された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に『雲南言語地図集』の雛形となる諸言語の地点の経度緯度情報をほぼ入力済であり,基礎言語資料もほぼ入手済である。扱う項目は語彙を中心として,音韻も一部考察に取り入れる予定であり,それも選定済である。あとは具体的な言語データを入力し,考察を行い,解説を書くのが主な研究プロセスとして残っていて,地図化はスムーズに進む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度なので,これまでの研究成果の土台の上に立って,当初計画していた『雲南言語地図集』の初めの雛形が出来るように具体的な方策を取りたい。資料的には『雲南省志』の第58巻「漢語方言志」と第59巻「少数民族語言文字志」がまとまっているので,それを最小限カバーし,スワデッシュの基礎語彙100語に関して言語地図化を行う。すると,語彙に関しては前者は9地点,後者は36地点,計45地点をカバーするのみだが,余裕があれば更に他の資料から地点数を増やし,考察のための厚みを増すこととする。年度末までに研究結果をモノグラフの形にまとめる。
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Causes of Carryover |
2016年度に購入した書籍代が大幅に配分額を超過したため,残額支給として処理せず一律2017年度に支出することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に物品費(書籍代)として使用する。
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Research Products
(2 results)