2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Typological Study of Resultative Constructions in Cantonese and the Zhuang languages: With the Main Focus on the Issue of the Geographic Contiguity
Project/Area Number |
15K02528
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石村 広 中央大学, 文学部, 教授 (00327975)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 結果構文 / 漢語方言 / タイ系言語 / 分離型 / 複合型 / 未然法 / 已然法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、漢語系の結果構文とタイ系の結果構文に関する調査・分析を通じて地理的連続性の実情を明らかにし、言語類型論の領域に新たな知見を提示することにある。状態変化使役を表す北京官話の結果構文は已然法を基本とし“武松打死了老虎”(武松が虎を殴り殺した)のように複合述語の形をとる。他方、タイ系言語の結果構文は2つの述語の間に目的語が割り込む分離型の語順を形成する。そして、地理的に両者の中間に分布する南方漢語には、複合型・分離型2つの形式が併用されている(橋本1978)。 本研究が行った調査内容に基づくと、南方漢語に現れる分離型には、2つのタイプがある。1つは、浙江省や福建省の方言に多く見られる非生産的な結果構文である。これは願望や仮定といった未然または非現実の文脈で用いられることが多い。これらは多くの場合、目的語は第三人称代名詞であり、結果補語は単音節動詞である。フレーズ全体がすでに慣用化しているものも確認された。もう1つのタイプは、広西チワン族自治区および海南省の特定の地域に確認される生産的な結果構文である。こちらは分離型であるにもかかわらず已然法をもち、実際の使用状況において複合型よりも優勢である。 従来の研究では、漢語方言に見られる分離型は、中古漢語における隔開式(新兼語式)の流れを汲むものと説明されてきた。だが、本研究が行った調査によると、中古漢語に由来するものは前者のタイプであり、後者のタイプは壮(チワン)語や黎(リー)語といった土着の有力な民族言語(主にタイ系言語)との接触によって、その語順が保持されたり、新たに生じたりした可能性が高い。要するに、広東語を含む漢語とタイ系言語は孤立型言語に属するが、結果構文の文法メカニズムは橋本説とは異なり非連続的で、互いに異質なものである。なお、本調査結果は復旦大学中文系編《語言研究集刊》第20輯(2018年)に掲載された。
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