2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02536
|
Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 誠 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00529646)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 日本手話 / 音節 / 適格性 / 音素配列論 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本手話の音節は、「手型」、「位置」、「動き」の各カテゴリからそれぞれ1つまたは2つの要素が選ばれ組み合わさることにより形成される。その組み合わせの一部は適格な音節を形成する一方、その他の音節は不適格な音節となる。本研究では、機械学習の分類アルゴリズムを援用することにより、各要素の関係性や共起制限をあぶり出し日本手話音節の適格性(音素配列論)を明らかにすることを目的としている。機械学習を用いて日本手話音節の適格性を検討するためには、適格な音節(正例)だけでなく不適格な音節(負例)を収集することが必要となる。不適格な音節は、日本ろうあ連盟が発行している「新しい手話」を中心に手話辞典10冊程度をサンプルとし、その中に含まれる不適格な音節を抽出する作業を日本手話母語話者複数名の協力を得て実行した(翌年度以降も継続)。収集した不適格音節を機械学習へのインプットデータとするため、不適格な音節を記号化する作業(コーディング作業)が必要となり、手話通訳士にコーディング作業を依頼し、承諾を得ることができた4名に対してコーディング方法の指導(レクチャーおよび演習)を行った。その際、研究代表者が過去に作成したコーディングマニュアルを本研究の目的に沿うように大幅に改訂する作業も必要となり、指導と同時にマニュアルの改訂作業も行った(翌年度以降も継続して実施)。コーディングの指導を受けた手話通訳士には、来年度以降、実際に不適格な音節のコーディング作業を行ってもらうとともに、適格な音節のコーディング作業および過去に行ったコーディング結果を新しいコーディングマニュアルに従って修正する作業も担当してもらう予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
機械学習のインプット用データのひとつとなる不適格な音節(負例)の収集は、日本手話母語話者に依頼して行っている。日本手話母語話者とは、ろうの両親(彼ら自身も日本手話使用者)のもとに生まれ、日本手話を母語として獲得し使用しているろう者のことである。日本手話を母語とする者はその数が限られており、研究に協力してもらえる日本手話母語話者を見つけ承諾をえる作業に予想以上の時間を要している。また、研究開始当初、数名の日本手話母語話者に、サンプルの中から不適格音節を見つけ出す作業を日本語で書かれた文書で依頼し実施してもらったところ、依頼内容が正確に伝わらず期待した結果が得られなかった。そのため、途中より、研究協力依頼および研究内容説明は研究者が直接研究協力者と直接面会し、彼らの母語である日本手話を用いて行う方法に変更した。その際、日本手話・日本語通訳に堪能な手話通訳士に通訳を依頼することとなった。そのため、面会のための場所の確保や研究者・研究協力者・通訳者各々の日程・時間の調整が必要となり、当初の計画通りには研究依頼が進まなくなり、機械学習に必要な不適格音節例の収集に遅れが生じた。 研究がやや遅れているもう一つの理由は、コーディングマニュアルおよびコーディング作業の複雑さにある。コーディングの精度を上げるため、本研究目的に沿ってコーディングマニュアルを見直し、記号化する方法や内容をより細分化した。そのため、コーディングマニュアルの改訂に時間を要した。また、コーディング作業を担当する手話通訳士にコーディングマニュアルを周知し正確にコーディング作業を実施できるようになってもらうために想定よりも長い訓練時間が必要となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.日本手話の不適格な音節例(負例)の収集を継続する。より多くの日本手話母語話者から研究協力を得られるよう、依頼範囲を東海地区に限らず、日本各地区から研究協力者を募るようにする。 2.不適格な音節例の収集と同時進行で、集められた不適格音節のコーディング作業を開始・進行する。 3.適格な音節例(正例)のコーディング作業および既存のコーディングデータを最新のコーディングマニュアルの内容に沿って修正する作業を行う。 4.日本手話音節の適格性を見極めるためにどのような分類アルゴリズムが適切であるかを研究分担者と協議する。 5.不適格な音節例および適格な音節例のコーディング作業を夏ごろまでに一旦完了させ、秋以降これらのデータを用いて機械学習を行う。
|
Causes of Carryover |
物品費として計算機の購入を予定していたが、コーディング作業の遅れ等により当該年度における計算機の購入を差し控えた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
不適格な音節例の収集方法が変更になり、当初予定していた額よりも多くの支出が見込まれるため、次年度使用額の一部をそのための費用(謝金・旅費・送料・会議費等)に使用するとともに、当初より予定されていた計算機の購入費用に充てる。
|