2015 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語への道程:語彙二字語化における外部誘因、特に日本語の影響に関する研究
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15K02541
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
沈 国威 関西大学, 外国語学部, 教授 (50258125)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新漢語 / 新名詞 / 学術用語 / 翻訳語 / 日中語彙交流 / 日本借用語 / 二字語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度、専門書2冊、関連論文5篇、連載3回。概ね研究計画に基づき、具体的に下記の内容で研究を進めた。 語彙交流による日本製訳語の借用、二字語の急増、類義語群(改革、改善、改良、改変、改進;薄弱、微弱、軟弱、脆弱)の出現と意味用法上の細分化などの個々の一見無関係な事象を統合的に観察することにより、二音節化のメカニズム、外来要因の解明を進めた。具体的には「中日同形語一覧表」を用い、「才干、才華、才智、才略、才能」のような名詞550語(組)、「変革、改変、変換」のような動詞300語(組)、「薄弱、脆弱、軟弱」のような形容詞100語(組)、副詞他50語を対象語として選定し、コーパスの検索により文字列から複合語へと成長していくプロセスにおける使用頻度の変化を記述し、日中両言語における二字語の急増時期とそのタイムラグを時間軸に沿って、図表化し、個々の語だけではなく、新しい連語関係(コロケーション)の発生、日中間の異同も考察を行った。 本調査に先立ってパイロット調査として、名詞、動詞、形容詞をそれぞれ20語群前後、検索。データ収集の方法、手順を確認する。使用するコーパスは、日本語では、国立国語研究所の「中納言」をはじめ「明六雑誌」「太陽」「青空文庫」(明治・大正部分)、中国語では『四庫全書』「中国基本古籍庫」「台湾政治大学近代語語料庫」「申報語料庫」「関西大学近代中国語語料庫」『清議報』『新民叢報』「新青年」「人民日報語料庫1949~2008」等である。また考察対象に「教師、教員;改善、改良;軟弱、脆弱」といった語群も加えるのは、このような類義語群は、19世紀以降に発生した事象だからである。 研究グループで「解剖、解剖学、陰極、陽極、括弧、学位、教授、戦争、戦役、体育」等の近代日中同形語について、語源考察をし、公表した。研究仲間から広く意見を集め、さらなる考察に資するためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の研究は、19世紀以前の二字語に対し、個別語誌の考察が多く、連語から複合語に発達していくという語形成論的な考察も散見するが、いずもれ中国語の発展趨勢という内部要因にのみ関心が払われていた。しかし現代語の二字語は短期間に形成されたものであり、語彙化の視点だけではその急増ぶりを説明できない。いわゆる語彙化は長い時間を要とするプロセスだからである。二字語化の実現に必須条件と言われる「緊隣共現」と「高頻率使用」に関しては、どちらにせよ日本書の中国語訳が深く関わっている。「周縁アプローチ」という研究法で、中国内部の資料だけではなく、歴史上中国語および中国語研究と密接な関係にある周縁資料をも視野に入れ、ビッグデータに支えられているコーパス語源学の手法を駆使し、近代以降の中国語の変化を捉えるものを目指すという私が採用した研究方法は、語彙の実際使用だけではなく、使用頻度の変化も精確に捉えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度、以下の二項目を中心に研究を推進していく。 一、調査結果の分析と記述:平成27年度の調査で得られた結果に基づき、二字語語群の使用頻度変化図を日本語コーパス(中納言)と中国語コーパス(BBC)を利用して調査し、変化の相関図を作成し、事件、流行語を含め、両者の影響関係を把握する。日本語の借用による中国語多音節化の過程、表現性の変化等を分析する。形式動詞、二音節前置詞の発生、及び文構造にもたらされた変化についても記述する。 二、関連研究成果の刊行:予備考察の結果を踏まえ、年度内に2回、日中同形語である二字語について語源、意味変化、使用頻度の増加、使用される文体ジャンル等を考察する報告書を公開し、方法論を含め、験証し、成果を蓄積していく。同時に、前年度の近代日中同形語リストに基づき引き続き調査を行い、調査結果を整理し、日中同形語のデータベースを構築していく。
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Causes of Carryover |
予定のノートブック・パソコン(レノボ中国語OS)は、OSバージョンアップ(中国語Windows8から10へ)後のソフト使用障害の有無を見極めるため、購入を控えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ノートブック・パソコン(レノボ中国語OS,20万円,関西大学);研究報告書『近代同形語考源』を6月、12月2回刊行し、印刷代20万円;図書と語彙調査、文献翻訳の謝金等、併せて60万円;その他13万円。 国際学会参加のため、旅費30万円。(1)7月2-3日、中国北京語言大学、国際学会「漢字と中国語」、(2)8月20日、中国延辺大学、日中対照言語学第8回年次大会、(3)11月18日、台湾政治大学、国際シンポジウム、Power of Language, Language of Power: Where Concepts Meet Political History。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] 厳復科学概念的変化2015
Author(s)
沈国威
Organizer
アメリカ・アジア学会(AAS)
Place of Presentation
台湾中央研究院(台湾)
Year and Date
2015-06-21
Int'l Joint Research
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