2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02545
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 日本語 / 述語 |
Outline of Annual Research Achievements |
文には必ず動詞や形容詞等を含む述語があり、日本語の文では文末に現れる。文外や文末に至るまでの部分は文末の述語に先行する文脈となり得る。今年度は述語の部分を取り出し、文脈がない場合の処理について調査を行った。 述語は、その主要部が動詞であれば、動詞の過去形などの屈折形などや形容詞に接辞が付加した形であったりする。日本語では屈折形とされている形(歩い+た)も派生形(清潔+さ)も語根に接辞が付加されているという分析がある。アルファベット言語を中心に行われてきた先行研究によると複数の形態素から構成されている形態的に複雑な語は、語根や語幹から接辞が外される(接辞剥離)。しかし、研究代表者が筆頭の(Nakano et al. 2016)によると日本語では述語が和語や漢語系の語の場合は語根に該当する漢字が語彙記憶の中で活性化され(漢字活性化)、日本語でも接辞剥離が起こるのかは分からない。日本語は述語末に接辞が連なる膠着語であるため、文処理において先行部分からその出現が予測される述部の処理も接辞剥離または漢字活性化、あるいはその両方が起こる可能性があるがどれが起こるのかはまだ調査されていない。述部の処理は文処理における予測に影響すると考えられるため、その部分について調べた。 マスク下の語彙性判断課題による実験を3つ、その補足実験を3つ行った。その結果、日本語でも接辞剥離が起こるが、和漢語では漢字活性化が起こることが分かった。本結果は日本言語学会で発表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は連続する自然災害の影響で研究協力者が実験に参加できないなどのため実験が何度もキャンセルとなったり、研究代表者が手術を受け入院一ヶ月全治三ヶ月となったため、年度半ば以降研究ができない時期があった。また、文脈による影響を調べるためには、文脈がない場合の処理を調べておき、文脈のある場合とない場合を比較する必要がある。述語の処理について、当初の計画より詳しく文脈のない場合の調査までを行ったため、文脈のある場合の調査が立ち遅れた。 一方、研究を進めた分についてはそれなりの成果があり、その成果を学会で発表することが決まっている。また、実験方法に関する共著の書籍が出版される予定となっており、その中で研究で使用した実験手法を紹介することができ、当初は予定になかったが述語に関する詳しい調査の成果を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中の研究成果は国内外の学会等で発表するほか、学術雑誌に投稿する準備を進めている。また、文脈情報のない場合とある場合について比較しながら文中の述語の処理を調べる研究を進める。交互様相語彙性判断課題など行動実験のほか視線計測を用いた課題を検討しており、研究結果は研究会や学会等で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めるうちに明らかにするべき要因が増え、その要因についての調査を行っていたため、当初予定していた調査の実施を見送り、当初の計画より小額の実験等を実施したため、未使用額が生じた。また、災害や研究代表者の病気療養のため研究ができない期間が生じたため支出が少なくなった。次年度は、主に本年度の成果を国内外の学会等で発表するための旅費、学術雑誌に投稿するための英語論文の校閲費、及び、行動実験や生理学的実験の参加者やデータ入力や分析の補助者への謝金に使用する予定である。また実験に使用していたPC一台が不調となったため、新規購入する。
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