2015 Fiscal Year Research-status Report
日本語の文処理とワーキングメモリの相互作用の脳メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K02554
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
幕内 充 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (70334232)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心理言語学 / かき混ぜ / 機能的MRI / 読み時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語のかき混ぜという言語現象は、移動でありながら義務的ではない、等の興味深い性質がある。かき混ぜ文は、正準語順文に比べ大脳での処理負荷が高いことが脳機能画像法により複数の言語で確認されている。しかし、なぜそのように高負荷な構造が必要なのか、という動機を考慮することがかき混ぜという言語現象の全貌を捉えるためには必要であろう。本研究では、かき混ぜ文が産出される理由をワーキングメモリ負荷の観点から説明する認知神経科学的仮説を提案し、多角的に検証する。平成27年度は心理言語学実験と、機能的MRI(fMRI)を一つずつ行った。 心理言語学実験では主語・目的語・動詞という正準語順の他動詞文の主語か目的語の一方に修飾語を付加し、「太郎が意地悪な性格の花子をぶった。」のような文を作り、この語順を変更したかき混ぜ文「意地悪な性格の花子を太郎がぶった。」とした。同様に主語に修飾語を付加した正準語順文とそのかき混ぜ文も作った。合計4種類の文の読み時間をself-paced moving window methodで計測した。主要な結果として、主語が修飾された文のかき混ぜ(太郎を意地悪な性格の花子がぶった。)ではかき混ぜ文の読み時間の伸長があるが、目的語が修飾された文のかき混ぜ(意地悪な性格の花子を太郎がぶった。)ではかき混ぜ文の読み時間の伸長がなかった。 fMRI実験では主語が修飾された文のかき混ぜの処理に際して、他の文の処理の際の活動に比して、言語野の活動が高くなることが見いだされた。 読み時間計測、fMRIでの結果は、文の容認度調査の結果、先行コーパス研究の結果と整合する。これらの結果を統合し、かき混ぜ文が産出される動機についてワーキングメモリ・脳メカニズムの観点から考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」を使ってかき混ぜ文の抽出を行い、頻度の調査や、文のパターンの分析を行い、生態学的に妥当なかき混ぜ文の条件を明らかにする予定であったが、我々にとって新しい研究手法であったため、結果を得るに至っていない。心理言語学実験では、fMRI実験の参照データとなる結果が得られた。またfMRI実験もデータ取得・分析が完了できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コーパス研究 「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」を使ってかき混ぜ文の抽出を行い、頻度の調査や、文のパターンの分析を行い、生態学的に妥当なかき混ぜ文の条件を明らかにする。 言語心理学実験 かき混ぜ文の復唱課題を行い、間違いの分布を検討する。 fMRI実験 正準語順文、かき混ぜ文に適切な文脈を加えた条件と、文脈なし条件を比較し、文脈の存在がかき混ぜによる処理負荷増を抑えるか確かめる。
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Causes of Carryover |
予算は計上していたが、平成27年度に国際学会に参加しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会に1つ以上参加する。
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