2017 Fiscal Year Research-status Report
言語的発想法の視点による表現法の地域差とその成立に関する研究
Project/Area Number |
15K02556
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 隆 東北大学, 文学研究科, 教授 (00161993)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 言語的発想法 / 表現法 / 言語行動 / 談話 / オノマトペ / 感動詞 / 地域差 / 方言学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語方言における表現法とそれを生み出す言語的発想法の地域差を明らかにするとともに、その成立過程について、社会的・歴史的背景との関わりの中で考察することである。本年度はこの目的に従って、次の研究を行った。 (1)理論・調査法の検討:「言語的発想法」のあり方を探り出すための現実の言語運用を把握する方法論について引き続き検討した。特に、談話展開の方法を明らかにするための調査法として「疑似会話型面接調査」という新しい方法論を開拓し、その方法でとらえられた談話展開と、従来の会話資料による談話展開とを比較することで、「疑似会話型面接調査」の有効性を検討した。 (2)地域差の網羅的把握-目的別言語行動の枠組みによる表現法の調査:昨年度までに収集した宮城県の気仙沼市と名取市における場面設定会話の文字化・音声データを分析した。特に、要求表明系の場面として「頼む-受け入れる/断る」を、恩恵表明系の場面として「申し出る-受け入れる/断る」を取り上げ、そこから浮かび上がる言語運用のあり方について考察した。これは、今後、他地域で行う比較調査や全国分布調査の基礎的な資料ともなるものである。 (3)具体的現象についての分析:オノマトペと感動詞について、その表現機能に東西差が存在することを掘り下げて考察した。その結果、自己表現の一環としてオノマトペや感動詞が使用され、それらが当該方言にとって必須の要素である東北方言のような場合と、対他的な伝達性を強く担い、それらが当該方言にとって選択的要素である関西方言のような場合が存在することを明らかにした。また、挨拶表現としての「おはよう」という表現について全国的な談話資料を使って分析し、談話論的な立場から朝の挨拶の地域差を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究項目はほぼまんべんなく進行させることができた。その点で、研究はおおむね順調に進展していると判断することができる。 しかし、全国調査については本年度実施の予定であったが、それには至らなかった。ただ、検討ための基礎資料として、全国型の談話資料の場面設定一覧を作成したり、先行研究における調査項目の整理を行ったりしながら、全国調査のための項目作りを進めることができた。 また、オノマトペと感動詞については、その質的な地域差について一定の見通しを得ることができたほか、個別現象として「おはよう」という挨拶表現を談話論的な角度から分析し、その地域差を明らかにすることができた。このように、このテーマに関連する複数の分野で成果を上げられたことは予想以上の成果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進行としては、当初の計画から大きく逸れないかたちで実施に移していきたいと考えている。 特に、「地域差の網羅的把握-目的別言語行動の枠組みによる表現法の調査」という課題については、重点地域調査を充実させる意味で、関東(東京)・関西(大阪)・九州(福岡)といった東北と比較できる地域のデータ収集やその対照的分析をぜひとも行いたいと考えている。 また、次年度は計画の最終年度であることから、これまでの研究成果を整理するとともに、研究協力者を交えたシンポジウム等を開き、本研究の成果をアピールしていきたい。研究成果をまとめた著書の刊行も計画したい。
|
Causes of Carryover |
当初、本年度に予定していた全国調査のための費用が、本調査の実施を見送ったために、準備段階の費用のみの支出にとどまったことがその理由である。 次年度においては、本年度十分実施のできなかった全国的視野の調査、特に、重点地域調査の充実を図るとともに、地理的分布調査の実施のために予算を使用する予定である。
|
Research Products
(11 results)