2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02588
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
福田 薫 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50261368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 文法化 / 短母音化 / 頻度効果 / 複合語 / 強勢配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代英語においても音形や語形の変異が観察されるが、これらは言語運用に属する事象として理論言語学的には重要視されてこなかった。本研究では、コーパス調査とデータ解析を通して、変異の要因を実証的、定量的にとらえること、特に当該の言語形式の使用頻度が果たす役割を明らかにすることで、言語変化のメカニズムを追究することを目的とする。 現代英語の一部の語において、たとえばroom[ru:m/rum]のように、長母音[u:]が短母音[u]と交替する現象が観察されるが、このことから、数世紀前に始まった短母音化が現代英語においても進行中であると考えられる。本年度は本研究課題を構成する研究テーマのひとつとして短母音化の現象を取り上げ、先行研究、英語発音辞典の記述およびコーパス調査のデータに基づいて、この短母音化に影響を与える言語内的要因を中心に検討を行い、その成果を学術論文(福田 2018)として発表した。 上記論文では、音節単位のレベルで働く要因として、当該母音に後続する子音の存在、その子音の有声性、閉鎖音性、および軟口蓋音性などの条件が短母音化を促進することを定量的に明らかにした。これらの条件が複合的に満たされる場合に短母音化が強く促進され、逆に、これらの条件が満たされないほど長母音が保持される傾向が確認された。 さらに、複合語での強勢配置パタンと強勢等時性の観点から、複合語の第2要素の位置が短母音化の圧力を受けやすい環境の一つであることを特定した。実際、bedroomでは高い割合で短音化される事実、およびこの主張の妥当性を示す事実を提示した。その議論の中で、高頻度効果が短母音化に関わり、broom, groom, roof, rootなどの比較的低頻度の語ではroomとの類推によって短母音化が生じる可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者として鋭意研究の進捗を図ってきたが、申請時に予定していた4件の研究テーマのうち、-arilyで終わる副詞の強勢移動と頻度効果に関しては、音韻論の最近の展開、特に最適性理論における強勢転移の議論に十分に精通する必要がある。統語と頻度効果に関しては、thatの脱落を文法化進度の指標とするなら、no doubt構文以外のthat脱落を示す構文を調査する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
[u:]の短母音化に関しては、発音辞典の記述に基づく長短2値のデータよりも、母語話者の発音を機器で計測した母音継続時間データを用いる方が、精度の高い分析が期待できる。本学の外国人教師、英語圏からの交換留学生の協力を得て、音声データを収録する予定である。 同様の方法で、-arily副詞における強勢転移のデータを収録していく。ここでは、市販の音声コーパス(SwitchboardコーパスのDVD版)の購入も検討している。頻度効果との関連では、-arily副詞の中で最も高頻度で使用されるnecessarilyはnotとの共起率が高く、その分文脈からの予測可能性が高い。意味情報が希薄化した固定的表現において、音声上の縮小が生じても不思議ではない。実際、いくつかの発音では音節の脱落が生じているように見え、その際には最適性理論が予測する通り、強勢転移が起こらない。学内の母語話者の協力を得て、事実としての音節脱落を確認していきたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者として鋭意研究の進捗を図ってきたが、研究課題のうち音形・語形と頻度効果に関しては音声学・音韻論の最近の展開、特に最適性理論における強勢転移の議論に十分に精通する必要を感じた。統語と頻度効果に関しては、thatの脱落を文法化進展度の指標として設定するなら、no doubt構文以外にも、thatの脱落を示す構文を対象とする必要を感じた。研究の精度を一層向上させ、調査対象を当初よりも拡大する必要に迫られたため、研究の時間を確保するために延長申請を行った。
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Research Products
(2 results)