2016 Fiscal Year Research-status Report
創造的逸脱表現を支える文法のしくみ:言語使用のインターフェイスと言語変化
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15K02590
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鈴木 亨 山形大学, 人文学部, 教授 (70216414)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文法 / 構文 / 意味解釈 / 逸脱表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)創造的逸脱表現としての'Think different'という英語表現は、標準的な文法の観点からすると逸脱的である。しかし、動詞'think'、および形容詞'different'を中心とする関連表現の文法特性や使用条件を精査すると、とりわけ語彙意味論的視点からは、重層的な解釈を持ちうる創造的表現として容認される環境が、現代英語においてそれなりに整っていたのだと考えられる。この表現が容認される背景には、口語表現の命令文という形式上の特性に加えて、'think'と'different'というそれぞれの語の語彙意味論的・語用論的特性が複合的に関与しており、構文的にも語彙的にも局所的なある種の言語変化の発現であることを明らかにした。ただし、新奇な表現であるため潜在的に意図されるその重層的意味解釈が、母語話者にとっても常に容易に得られるわけではないという点にも注意が必要である。 (2)英語の結果構文の分類において、Washio (1997) の「強い結果構文」と「弱い結果構文」の二分法から外れる例外的カテゴリーとされた「見せかけの結果構文」の特徴を精査し、その描写対象となるのは変化動詞を伴う「変性事象(transformation event)」に特化されていること、そして文法的特徴として(a)叙述関係のミスマッチと(b)副詞的修飾関係の2点にあることを明らかにした。さらに構文的解釈において、叙述関係のミスマッチはタイプシフト (type shift) によって解消されているという分析を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
逸脱表現としての'Think different'が認可される文法的諸条件についての解明はかなり進んだが、今後は並行して、関連する様々な表現の成立条件を、構文論や言語変化の視点から分析し、理論的一般化を図る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
'Think different'を中心とする活動(非能格)動詞と形容詞補部の組み合わせが文法的に認可される諸条件を明らかにするため、関連表現の調査とデータベース化を進めるとともに、文法的逸脱と言語変化に関する理論的一般化を図る。
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