2018 Fiscal Year Research-status Report
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15K02591
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 明 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70265487)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サイズ / 程度の全称量化 / 最上級 |
Outline of Annual Research Achievements |
大きさをあらわす述語が修飾している名詞に内在する程度を示すという現象かが日本語で最上級との組合せにおいてさらなる複雑な様相を呈すことは前年度発見したことであるが、ある程度の中間報告を日本英語学会のワークショップで発表し、短い論文の形にもまとめた。論文は国際学術誌に投稿し、現在審査中である。 サイズをあらわす修飾表現は、これまで考えられていたよりも広い範囲で文法上重要な働きを示していることが本年度の研究において判明した。 しかしながら、本年度の主たる成果は、何といっても、程度変項の全称量化が日本語に存在しているという事実の発見である。当初考えもしなかったことだが、 この科研費プロジェクトはこの発見のためにあったと言っても過言ではない。日本語に限らず他の言語においても、同種の統語パターンが存在することが報告されたことは知る限りこれまでになく、画期的な成果だと自負している。これは不定(indeterminate)が関わる現象なので、譲歩節を除けば英語には存在しない日本語の特徴である。当該現象が否定極性や自由選択の性格を帯びる場合について論 文をまとめ、近く、極性についての論文集に収録の上刊行される予定てである。否定極性や自由選択との関連では、名詞修飾の最上級が英語で類似のデータパターンを示すことがよく知られているのだが、日本語の最上級は英語で見られる用法を欠くという発見も、この研究の副産物として特筆に値する。日本語の最上級が序数詞を使うという特徴に関連していると考えて間違いない。日本語の最上級に欠けている用法は、スウェーデン語において通常の最上級と形態上区別されており、日本語の特徴はこの区別をさらに裏付けるものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最上級について、着実な進展が見られている。英語と日本語の違いについては、「もっとも」についての分析がまだ課題として残っているが、おおむね、当初の目標を達成したといえる。 サイズ修飾の文法的役割の重要性と程度変項の全称量化に関わる成果は、プロ ジェクト当初には全く予想もしなかった展開だが、これまで誰も着目していなか った領域をはじめて開拓したことになる。日英語の比較という当課題の基本目標 にそってまとめると、前者は共通項で後者が相違点ということになり、程度表現 に関する研究を大きく進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
サイズ修飾についての成果をもう少しまとまった形で論文に仕上げ、かつ、サ イズ修飾と程度変項の全称量化の両方が関与すると思われる現象も存在するので、 それについての研究を当プロジェクトの最終ステップとして進める。
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Causes of Carryover |
購入予定の書籍の価格が残額を上回っていたため。次年度額と合わせ、予定の書籍購入にあてる。
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Research Products
(2 results)