2016 Fiscal Year Research-status Report
英語・日本語数量詞句の作用域決定を司る統語的・意味的要因に関する理論的研究
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15K02593
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本間 伸輔 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40242391)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 数量詞 / 作用域 / 従属節 / any |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生成統語論の観点から英語・日本語の数量詞句(以下、QP)の作用域を決定する統語的要因について以下の4つの課題を設定し、QPの作用域決定への統語的要因の関与のしかたを探る。(A) QPの作用域の決定には,QPの内部構造がどのように関わっているか。(B) QPの作用域の決定には,QPへの統語操作がどのように関わっているか。(C) QPの作用域の決定には,節構造の種類と構造がどのように関わっているか。(D) QPの作用域の決定に関わる意味・談話的要因はどれだけ統語的要因に還元できるか。 平成28年度においては,平成27年度に行った(A), (B)の検討を引き続き行いつつ,課題(C), (D)の検討に取り組んだ。それにより,(1) 日本語では,2つのQPが「主語-目的語」の順序の場合は多義的にならないが,特定の種類の従属節などでは,多義的になること,さらに前年度に考案した主題/焦点素性の有無に基づく作用域の決定の仕組みによりこの多義性が説明できること,(2) 「主語-目的語」の語順のQPが多義性をもたらすとされる英語においても,特定の条件により多義的にならないとするJohnson (2000)らの観察を説明できること,を明らかにした。以上の成果については,現在論文を執筆中である。 また,数量詞の意味における前提性などに関して,先行研究および過去2カ年の本研究において得られた知見を応用し,英語のanyと日本語の「何か」「いくつか」等の表現の意味を比較する研究を行った。この結果,中学校英語教科書におけるanyの訳語としてどのような表現が妥当であるかを考察する研究として,本間(2016)「中学校英語教科書におけるanyの訳語についての覚え書き」を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初設定した4つの課題のうち,(C)の検討は概ね順調に進んだが,課題(D)に関する検討がやや遅れている。さらに,平成28年度中に学会発表により成果を発表する予定であったが,そのための準備が遅れたため,平成29年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,「研究実績の概要」で述べた課題(D)の検討を中心的な検討事項としつつ,課題(A)から(D)すべてについて総括的な研究を行う。それとともに,同年度前半においては,前年度までの成果を学会発表するための準備を行う。年度の後半においては,それまでの研究成果をまとめ,論文を執筆する。この論文は専門誌への投稿を検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に海外の学会に出席し成果発表する予定であったが,研究の進捗状況により平成29年度に開催される学会にて発表することに計画を変更した。従って,このための旅費が平成29年度に必要となる見込みであるので,必要額を確保するため未使用分をとっておくこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外の学会(米国またはヨーロッパ)に出席するための旅費として使用する計画である。
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