2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖田 知子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (50127205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 知子 龍谷大学, 社会学部, 教授 (90209255)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ことば学 / 語用論 / 文体論 / 情報デザイン / 謎解き / 推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平成24年度~26年度科研基盤(C)「情報操作のデザイン:理論と応用」における有標の情報操作研究を踏まえ、その後継研究として、無標の日常的な情報デザインの掘り起こしという、より広い観点からことばのありさま、仕組みと働きを考究するものである。 平成27年度は、ミクロレベルの情報デザインをテーマに、意図的なことばの仕掛けの面白さ、および効果的な伝達の構図のデザインを扱った。ことばと心を繋ぐ推論の働きを重視する「ことば学」の観点から考究することにより、その射程の拡大を図った。まず、多くの可能性の中から特定の言語表現が選択されるまでの言語使用者の意図を含めた過程を取り上げた。さらに、被伝達者が行うであろう推論を意識した情報デザイン過程も扱った。それにより、広範な意味論的・語用論的そして文体論的枠組みの構築、すなわち「情報デザインのことば学」へと発展させていくことをめざした。 平成27年度の研究実績として、論文5編(単著3編、共著2編)、共編著1冊、学会発表1件がある。そのうち、研究代表者・分担研究者・連携研究者3名の共著「『アクロイド』の語りのデザイン」は、PALA2014(スロベニア)で行った国際学会研究発表を、よりことば学の観点に特化して大幅に改定を行ったものである。推理小説におけるフェアネスとサスペンスとのせめぎあいの関係を踏まえ、叙述レトリックのデザインの技巧を論じ、その誤誘導の仕掛けのデザインの分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究実績として、論文5編、共編著1冊、学会発表1件がある。また、平成28年度12月開催の国際学会発表(AULLA2016、オ―ストラリアのビクトリア大学で開催)にも採択され、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、分析対象を談話に広げ、マクロレベルでのことばの仕組みと働きに焦点をあてる。語用論、Weber (1996)のコンテクスト重視の文体論、メタ談話も含めた談話分析を踏まえ、ことばは使われる環境の中で相互関係的に機能することを検証する。意味の不確定要素や意味決定不十分性、情報の階層性に注目し、ずれやゆらぎ、発話の力の違いなどを許容することばの柔軟性を俯瞰的に考究する。 とりわけ、談話についての談話である、より高次なメタ談話(metadiscourse)に着目する。書き手は伝達意図を示すために、テクスト談話を構成するのみならず、内容や相手に対する態度を投射する。Hyland(1998)は、表出的メタ談話と対人関係的メタ談話の区別は難しいとしつつ、使い手の情報管理の意識は、単なる付加部ではなく語用論の中心をなすと指摘している。メタ談話を対人関係さらには情報管理を意識したものとして捉えると、命題内の一部を取り立てたり、話し手の評価や態度を表したり、働きかけの主張や手がかりを示したりする表現が、並行して使われることも多い。このような談話の流れの整理と体系化の視点は必須である。前年度のミクロレベルにおけるレトリック研究を基に、マクロレベルでの情報の構図と流れを捉える。 なお、誘導という明確な意図はなくても、どのような立場から事象を捉えるかという構図の取り方や、使用することばや表現に、話者の主張や偏った情報が織り込まれた仕掛けを含むレトリックも日常的にはよくみられる。従来の言語学的分析に、批判的談話分析手法などもとりいれて、学際的な観点から質的分析を推進する。 今年度は、論文3編、国際学会発表(AULLA2016、オーストラリアのビクトリア大学で開催)を予定している。
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Causes of Carryover |
注文していた洋書の入荷が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
注文した洋書が納入されれば、予定通り使用する。
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Research Products
(8 results)