2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02599
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (70213866)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタファー / 英詩 / 擬人化 / 語彙意味論 / 認知言語学 / Beowulf / 歴史的系譜 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
古英詩におけるメタファーについての昨年までの研究をまとめて、2016年7月に行われた国際英語教授連盟 第8回大会(於ロンドン大学)で2件の研究発表行った。ここではまず中世部会でBeowulfにおける武具を人に譬えるメタファーについて論じ、続いて全体発表で、筆者が発見した元 London大学教授 Sir Israel Gollancz の残した Beowulfの現代英語訳断片について、その価値を述べた。 現代英詩におけるメタファー研究を始めて、まず戦争詩人 Wilfred Owen の詩を対象として、研究分担者として従事している英語感情メタファーの研究と連動する五感を表す動詞と形容詞に注目した。そしてThe Last Laughという詩の「笑い」の類語のメタファー用法の特徴を戦場での爆発音や射撃音へのメタファー使用の観点から論じた。 関連研究としては、コーパスから用例を取り出して英語学的研究に利用する方法を論じたHans Lindquist, Corpus Linguistics and Description of English (2010) を昨年度までに翻訳編集し、『英語コーパスを活用した言語研究』(大修館 2016年)という翻訳書を出版した。 研究分担者大森文子を含む同じ翻訳グループでは、新たな研究翻訳対象としてメタファーの歴史的研究に役立つ専門書 Kay and Allan, English Historical Semantics (2016) の翻訳作業を始めた。本書では語彙意味論の立場から英語の単語の意味拡張のパタンとメタファー義への発展の過程を考察するので、本科研研究のテーマに必須の知見を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標の1つである研究書『英語動物名のメタファー』(仮題)の出版に関しては、前回採択科研費の研究期間から通して、和文論文12本と19世紀英国児童向け動物寓意詩6編の翻訳論考の原稿が既に手元あり、研究分担者と共に、クロスレファレンスを施して関連付ける作業を行うことを予定していたが、この編集作業は2016年7月の国際学会での発表準備を前期に行ったために、後期の3か月しか行えなかった。しかしその代わりに、研究代表者のこれまでの英語論文を引用・言及したことのあるヨーロッパの有力な英語歴史研究者3名が集まるセッションで、長く研究している古英詩Beowulfにおけるメタファー用法について発表することができた。また分担者と連動してWilfred Owenの詩のメタファー論考を行い、部内研究会で発表後、和文論文を作成したのが大きな成果である。これによって20世紀に英詩のメタファー研究を始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、『英語動物名のメタファー』(仮題)の出版を目指して、手元にある和文論文12本と19世紀英国児童向け動物寓意詩6編の翻訳論考の原稿に、クロスレファレンスを施し、補足・関連付を行う。英詩のメタファーに関する研究成果を、毎年1回、海外の学会において英語で発表を行う。29年度は連合王国Leeds大学での国際中世学会において古英詩Beowulfに見られる火と剣と戦士と怪物に共通するメタファー表現について発表する予定である。前半は、この準備に当てる。
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Causes of Carryover |
関連国内学会の大会の多くが関西で開催された。研究分担者を含む4名のグループの所属校で持ち回りで年6回開催している歴史的意味論研究会において、愛知教育大学で開く2回を大阪大学言語文化研究科で行った。国会図書館への出張を行わなかった。これらの理由で国内旅費を使用しなかった。 また最新のタブレット型パソコンを、研究分担者として行っている方の科研費で購入できたため、物品費も研究書数冊のみに使用して、少なく済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
毎年度、可能ならば連合王国へ出張し、英国図書館での資料閲覧、及び研究成果の一部を国際学会において英語で発表する。今後は残金をこの海外出張に有効に使用する方針を立てた。
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