2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02599
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (30191787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (70213866)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英詩 / メタファー / 歴史的系譜 / 語彙意味論 / 認知詩学 / 擬人化 / Beowulf / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
古英詩におけるメタファーについての昨年までの研究成果をまとめて、2017年6月に日本中世英語英文学会西支部大会(於関西外国語大学)、7月に国際中世シンポジウム(於リーズ大学)で研究発表行った。前者では、筆者が入手した古英詩Beowulfの現代英語訳手稿断片が、その訳文に見られるメタファーの訳し方、訳文の頭韻技法の観点から、故ロンドン大学Gollancz教授の手になるものであることを主張した。後者では古英詩Beowulfに見られる火と剣と戦士と怪物に共通して用いられる動詞・形容詞を比較提示し、これらが同一視されて、お互いのメタファーとして用いられていることを論じた。英詩の通史的メタファー研究では、研究分担者として行っている英語の感情語の研究とタイアップして、歴史的辞書The Oxford English Dictionaryをコーパスとし、抽出した約3000例の名詞fearが現れる用例を分析、その対義感情としてdespairよりもhopeが顕著であること、動物名がfearのメタファーとして用いられる場合には鳥が多く歴代の詩人からの使用例が確認されたこと、他にwormがfearの象徴として詩において用いられることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度にはWilfred Owenの詩のレトリック論考を行い、笑いを意味する名詞・動詞の類語使用とメタファーを論考したが、今年度は、歴史的辞書The Oxford English Dictionaryに見えるfearの用例3000を抽出検討し、研究目標の1つである研究書『英語動物名のメタファー』に関わる感情語の動物表象について、fearを表す鳥と虫 (worm) という史的系譜を辿る着眼点を得た。加えて、長く研究している古英詩Beowulfにおけるメタファー用法について、再び国際学会で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、英詩の感情メタファーの表象となる動物名について、近代詩現代詩からdespair, fear, hopeなどと共起する動物名を抽出し、そのコンテクストを考察比較、歴史的系譜を辿る作業を行う。同時に『英語動物名のメタファー』(仮題)の出版を目指して、手元にある和文論文12本と19世紀英国児童向け動物寓意詩6編の翻訳論考の原稿に、クロスレファレンスを施し、補足・関連付を行う。
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Causes of Carryover |
愛知教育大学での研究会2回を大阪大学での開催に変更し、研究発表を行った日本中世英語英文学会西支部大会が近隣で行われ、国会図書館への出張を取りやめたことによって国内出張旅費が少なく済み、リーズ大学への出張費しか使わなかった。また今年度のメタファー研究に必要な研究書は運営交付金で購入できたため残額が生じた。この残額は今後の研究成果を国内遠隔地や海外で行うための出張費に回して有効に使用したい。
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