2015 Fiscal Year Research-status Report
日英語の意味・語用論的志向性に関する記述的・理論的研究
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15K02603
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
今野 弘章 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80433639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デフォルト志向性の解除 / 私的表現 / 公的表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、先行研究で指摘されている日本語の非伝達的表現志向性/英語の伝達的表現志向性に注目し、本研究の中核をなす「デフォルト志向性の解除」という概念の基礎固めを行った。研究代表者のこれまでの研究成果を含む先行研究の知見を活用し、日本語形容詞「やばい」の副詞的用法、日本語複合助詞「からの」の単独用法、英語のmad magazine 構文、英語の日記文における主語省略の4つが、上記志向性を解除する現象「デフォルト志向性の解除」として特徴付けられることを明らかにした。 「やばい」の副詞的用法と「からの」の単独用法は、伝達的使用に特化しているという点で日本語の非伝達的表現志向性の解除として捉えられ、mad magazine 構文と日記文の主語省略は、非伝達的使用に特化しているという点で英語の伝達的表現志向性の解除と捉えられる。このうち、「やばい」の副詞的用法、「からの」の単独用法、mad magazine 構文をデフォルト志向性の解除と捉える経験的証拠には、代表者のこれまでの研究成果を援用した。英語日記文の主語省略が非伝達的使用に特化しているという、当該の現象をデフォルト志向性の解除と捉えるために重要な性質は、先行研究によって「日記」という使用文脈のみを根拠に指摘されている。今年度の研究では、この語用論的性質が動詞tellの直接話法補部への埋め込みを利用した文法的テストによって確認できることを明らかにし、先行研究の指摘を経験的に裏付けた。 今年度の研究内容は、3つの研究会・講演会で発表した。また、今年度の研究課題との関連で、筑波大学の廣瀬幸生教授を講師に招き、講演会「言語使用の三層モデルと日英語のデフォルト志向性(の解除)─英語の非定形節に見られる主体化現象を中心に」を開催した(2015年12月12日於奈良女子大学、奈良女子大学文学部欧米言語文化学会と共催)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って研究を進めることができ、研究成果を研究会および講演会で口頭発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の研究成果を論文として発表し、予定している他のデフォルト志向性解除に関する研究を開始する。
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Research Products
(4 results)