2015 Fiscal Year Research-status Report
近・現代英語期における英語表現の構文化に関する研究
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15K02624
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Research Institution | Nanzan Junior College |
Principal Investigator |
石崎 保明 南山大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (30367859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 用法基盤モデル / 交替現象 / 構文文法 / 認知言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、大規模な英語文献データベースや電子言語コーパス、英語辞書・英文法書等を用いて、特に初期近代英語期から現代にいたるまでの英語表現の構文化、とりわけ語彙化について、その実態を明らかにすること、および、近年着実に進展を見せている、認知言語学・構文文法理論を通時的構文変化の説明に応用するという試みに対して、その研究手法の妥当性を検証し、有効な方法論を構築・提案することである。 本研究は、意味の競合や交替現象を起こす英語表現の初期近代英語期以降における発達に関する実証研究と、用法基盤モデルに基づく方法論の開発と説明にかかる理論的研究、に大別される。今年度は理論の構築と、climbを事例とした自他交替動詞の発達を中心に考察を進めた。理論構築としては、構文文法理論に基づく歴史研究を展開する図書・論文を調査し、その最も主要な研究書の1つである『Constructionalization and Constructional Change』 (Traugott and Trousdale (2013))に対する書評論文を執筆した。その内容は、『IVY』48号(名古屋大学英文学会)に掲載されている。また、構文文法理論に基づく語義の歴史的発達を分かりやすく解説した教科書(中野弘三編『語はなぜ多義になるのか』第6章「語義の歴歴史的変化-事例研究」)の執筆を担当し、同書は、朝倉書店より2016年中に出版される予定である。 実証研究としては、英語文献デ-タベ-スや電子コ-パスを利用して動詞climbのの用例を収集し、その調査結果に基づき、認知言語学の観点からclimbの自他交替の歴史的発達の実態についての論考を執筆した。その内容は、現在編集中の論文集(『言語変異と文法理論』(開拓社))に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定として、全研究期間の前半は(i)先行研究の検証を通して通時的構文化に関する方法論の開発を行うこと、および(ⅱ)競合や交替現象を起こす英語語彙の発達を調査すること、の2点を行うことを考えていた。(ⅰ)については、現在のところ新たな方法論を開発するには至っていないものの、それに必要な先行研究の検証・整理や、多種多様な電子版言語資料それぞれの長所や短所について、一定の理解を深めることができた。(ⅱ)については、自他交替現象の1つの事例として動詞climbの通時的発達状況を取り上げるにとどまったものの、通時的な使用の実態を考察することがでできた。以上のことから、現時点では、本研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、今年度に引き続き、通時的構文文法理論の構築を目指すとともに、事例研究として動詞climb以外の自他交替動詞、および、所格交替動詞の通時的な使用の実態にも範囲を広げてを調査を行う。その際、近代英語期に書かれた様々なジャンルの言語資料が電子化されている近年の研究動向を踏まえ、裁判記録や日記、および私的な書簡集といった、より口語体に近いテキストタイプを選びながら用例の収集やその使用文脈に対する調査を進め、用法基盤モデルの理念に可能な限り沿った形での調査を進めていく予定である。最終年度となる平成29年度は、それまでの研究結果をまとめ、その内容を学会発表や論文の形で発表していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は理論の構築に重きを置いたこともあり、研究図書や論文の調査を優先させ、その結果、論文執筆が遅れたという背景がある。論文の執筆にあたっては、当初は英語による論文執筆を考えており、そのための費用を計上していたが、年度内では英語論文の執筆が間に合わなかったことにより、それに付随する経費が今回の繰越金の大半を占めている。加えて、出張旅費については、本務校の業務との兼ね合いにより、出張期間が当初考えていたよりも短くなったという事情があり、そのことも今回の繰越金の発生に影響している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は、当初予定していた校閲のための支出がなく、また海外出張のための予算が予定よりも低く収まったことにより残額が生じたが、28年度はその残額をそれぞれの支出項目で使用することを考えている。 本研究では、適切な言語資料の解釈に基づいた用例の収集を行うため、古い時代に書かれた文法書・辞書の利用や文献デ-タベ-スの活用が不可欠となる。これらは、日本国内では利用しにくいものもあるため、海外の図書館等で調査を行う必要がある。また、現在、北欧諸国を中心に本研究に関連する研究が進められていることも考慮し、本研究の成果は可能な限り英文での公表を考えているため、専門的な知識を有する英語母国語話者に英語論文を校閲(プルーフリーディング)してもらうための費用を確保しておきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)