2015 Fiscal Year Research-status Report
多文化就労場面における元留学生の異文化間コンフリクトと影響要因の研究
Project/Area Number |
15K02634
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
加賀美 常美代 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (40303755)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 元留学生 / 多文化就労場面 / 台湾人社員 / 日本企業 / 異文化間コンフリクト / 葛藤解決方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では日本国内の企業で働く台湾人元留学生を対象とし、多文化就労場面においてどのような異文化間葛藤が生じ、その際にどのような感情を抱き、どのような解決方略を用いて解決行動に至っているのか質的に検討することを目的とする。対象者は、日本の大学・大学院を卒業・修了し、日本企業に就職して10年以内の台湾人元留学生9名(男性2名、女性7名)である。2015年8月~9月に半構造化インタビューを行った。インタビューを文字化した後、KJ法(川喜田,1967)の手法を援用した。分析した結果、「職務上の違和感」、「違和感が生じた際の心理的状況」、「葛藤解決方略」の3カテゴリーが抽出された。まず、「職務上の違和感」は、社会や組織に対するマクロレベルのものと人間関係等に対するメゾ・ミクロレベルのものとに大別される。マクロレベルでは、職場環境に対する違和感である「日本企業の体質への違和感」、「グローバル人材への期待と現実の齟齬」、「グローバルビジネスにおける板挟み」の3カテゴリーが得られた。一方、メゾ・ミクロレベルでは、「周囲の日本人との職務上の意識の差」、「日本人との人間関係構築の難しさ」、台湾人であり外国人であるという「アイデンティティの葛藤」のカテゴリーが得られた。また、「違和感が生じた際の心理的状況」は、嫌悪感などの「否定的感情」を抱くが、そこでは「現実受容の困難さ」を認識しつつも、発想の転換などの「自己内調整」を行い、今後に向け「願望」を抱くなどの問題対処・査定を行う様子が示された。さらに、「葛藤解決方略」は「第三者援助」、「同調」、「調整」、「回避」、「主張」が見られた。以上のことから、台湾人元留学生は日本企業自体や周囲の日本人との人間関係構築等に違和感を抱き、否定的な感情を持ちつつも、自己内で調整したり、周囲に対する働きかけを行う等の解決方略を用いている様子が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にすすんでいる理由は以下のとおりである。 ①多文化就労場面の異文化間コンフリクトについて元留学生(中国、韓国、台湾)各10名程度、および日本人就労者10名程度に、半構造化インタビューを行った。 ②データ入力作業を行い、データの結果の整理、内容分析を行った。 ③データの分析結果を学会で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、学会発表の後、以下のとおりに研究を進める予定である。
①質的なデータ分析の結果を論文執筆に向けて準備を進める予定である。 ②質問紙調査を実施するため、質問項目を作成する予定である。 ③質問紙調査に向けて、対象者の選定、配布の方法など、実施方法の準備を行なう。
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Causes of Carryover |
次年度の使用額が生じた理由は、初年度の研究である元留学生のインタビュー調査の際、調査対象者の居住地区が東京近郊が多かったため、当初予定していた日本国内の旅費として使用しなくてすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、質的データの分析結果の学会発表を行う予定なので、交通費などに充当する。 また、質問紙調査を実施する際、調査機関に配布、回収、データ入力までを依頼する予定なので、その費用に充当する予定である。
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