2017 Fiscal Year Research-status Report
ピア・レスポンスにおける日本語母語話者と日本語学習者の差異
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15K02645
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
石毛 順子 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (40526050)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ピア・レスポンス / 推敲 / グループディスカッション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ピア・レスポンス(以下PR)においてグループメンバーおよびグループ外のクラスメートの作文を検討する際の、日本語母語話者と日本語学習者の発話と行動の違いを探ることである。平成29年度は、日本語母語話者と日本語学習者のPRの調査、プロトコル作成、質的分析、量的分析を行った。 日本語母語話者においては4~7月にかけて2~4名のグループのPRを15回分、日本語学習者においては4~7月に2名のグループのPRを5回分調査した。 日本語母語話者の初回のPRの特徴を前年と比較して分析した。前年、目的の示されない指示は、PRの進行を促進しないことが見出されたが、今年度は、目的を明示した指示は、指示された行動以外にも目的を反映させた行動を促すことが示唆された。具体的には、前年は「初めてグループが一緒になった人に対しては、素朴な感想・印象を伝える」という指示がなされていたが、目的が述べられていなかったため、参加者達は「感想」として何を話してよいかわからなかった。今年度は、ディスカッションでは批判的な意見をお互いに述べる可能性もあることから、この「ディスカッションに入る前に相手の研究に対する感想を言う」という指示の目的は相手の研究に対する敬意を表し、ラポール形成をするためであると説明した。その結果、目的に沿った、感想を述べる以外の行動も見られた。 日本語母語話者においては、PRを経験していくことで学習者が作文を高く評価する点が変化するか検討した。調査は中上級の日本語学習者を対象とした1学期の「作文」の授業で実施された。初回のPRと最終回のPRにおいて学習者が他の学習者の作文を高く評価した理由を抽出し、言語形式・構成・内容・その他に分類し、初回と最終回を比較した。その結果、初回では「間違いの少なさ」に代表される言語形式が多く言及されていたが、最終回では全く言及されていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度計画では平成29年度に行うのは日本語母語話者のピア・レスポンスの調査、プロトコル作成、質的分析(ピア・レスポンス時における言語行動のカテゴリー案の発表と再検討および日本語母語話者の差異の検討)、量的分析(ピア・レスポンス時における言語行動の特徴および日本語母語話者と日本語学習者に共通する特徴の頻度比較)、日本語母語話者と日本語学習者のピア・レスポンスの差異の発表であった。日本語学習者の調査は28年度で終了予定であったが十分な数が調査できず、29年度に引き続き調査を行った。十分な参加者が確保できていないためにピア・レスポンスの調査、プロトコル作成、質的分析が終わっておらず、および量的分析も十分には行えていないため、若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で本研究を終了させる予定であったが、30年度まで延長申請を行った。 日本語母語話者のデータ収集は28年度・29年度のみで終了予定であったが、延長が認められたため、さらに30年度の異なる日本語母語話者のデータ収集を行う。また、不足している日本語学習者のデータ収集を行う。平成29年度中に終わらなかったプロトコル作成・質的分析・量的分析に加え、(29年度から学会発表は行ってきたが、)30年度中は論文として発表を行い、さらなる研究の公表を目指す。
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Causes of Carryover |
平成27年度4月採択を目指して申請したが、平成27年度10月採択となり、平成27年度終了の時点で次年度使用額が生じていたため。また、延長を伴う理由により、平成27~29年度に研究の情報収集を目的とした出張が十分行えなかったため。 平成28年度秋2名、平成29年度秋に1名プロトコル作成の協力者が雇用でき、計3名体制となり、作業のスピードが速まった。予算額の残金はほぼ協力者への謝金となると思われる。さらに、使用額の余裕があれば、研究の情報収集のための出張も積極的に行いたい。
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Research Products
(6 results)