2016 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリー的アプローチによる日本語教師の「二重の応答性」の発達研究
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15K02664
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
康 鳳麗 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (30399034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
坂本 勝信 常葉大学, 経営学部, 准教授 (40387501)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ライフヒストリー的アプローチ / 日本語教師 / 熟練性 / 二重の応答性 / 目標概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語教師の「二重の応答性」とその形成過程に注目し、日本語教師の力量形成に必要不可欠な実践経験内容を、ライフヒストリー的アプローチによって明らかにする事例研究を積み重ねてきた。 今年度は以下の通り、フィールドワークを行った。日本国内では国際教養大学(秋田)1名、海外では台湾の大学4校6名(中国語母語話者2名、日本語母語話者4名)、計7名の日本語教師の事例研究である。7名のうち、3名が新規の事例研究である。銘傳大学(台北市)1名(中国語母語話者)、東海大学(台中市)2名(中国語母語話者1名、日本語母語話者1名)である。新規事例研究を行った1つ目の理由は質的研究における事例研究の特殊性を考慮してできるだけ多くサンプルを取り上げるため、2つ目の理由は事例研究の信頼性と妥当性を高めるためである。研究方法としては、現在の授業実践の参加観察及び実践者への半構造化インタビューに加えて、映像、音声データ、及び、授業資料を収集し、信頼性を高めるためのトライアンギュレーションを意識的に追求してきた。 また、質的研究方法としての参加観察やインタビュー研究等の意義を、先行の研究の到達点と課題を踏まえて確認し、その問題点の解明・克服について考究を重ねた。成果として、①2016年3月に行った中国天津で教える2名の中国人日本語教師の事例研究を論文として三重大学教育学部研究紀要第68巻に掲載された(タイトル:教師の「熟練性」の研究―2人の中堅中国人日本語教師の授業の比較分析を通して―)。②これまでの事例研究に基づいて日本語教師の「二重の応答性」の発達について中部教育学会にて報告する予定である(タイトル:「日本語教師の初任期から熟練期への「二重の応答性」の発達」,2017年6月17日,福井医療大学)。 なお、台湾の事例研究については、2017年度再度フィールドに入って観察分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画としては、事例研究の蓄積をすること、そして事例研究をもとに、研究の目的である「日本語教師の『二重の応答性』の発達過程を明らかにすること」を掲げた。事例研究については、先に述べたように7名の日本語教師の授業観察データ、インタビューデータを得ることができた。またデータの分析の上に日本語教師の「熟練性」について、授業の目標概念に注目し、授業の臨床場面において目標の一部をリセットしたり修正しながら「出来事」に対応していることを明らかにした。まさに学習者と対話の中、大きくとらえると「二重の応答性」を駆使しながら授業の臨床的な対応を積み重ねていることが明らかになった。 こうした具体的な事例研究に基づいた仮説(目標概念の機能とその「書き換え」による授業の展開の修正)を提起し、学会の報告、論文化を通して今後の研究の方向性を提起できたという点において、「ほぼ満足できる成果」を挙げたものとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H29年度)においては、まず、1年目、2年目に得られた結果を基にして、事例研究を丹念に行い、そのことをモノグラフとして学会で報告し、論文として上梓する(日本語教育学会、中部教育学会、中国語教育学会)。次に、引き続き事例研究を進めフィールドワークを実施する(国際教養大学、ARMS日本語学校、スバル日本語学校、台湾4大学、天津3大学)。上述するとおり、長いスパンでの考察を行うために継続的にデータ収集の蓄積に努めると同時に、これまでの研究で得た仮説的な結論を踏まえながら、得られた結果をとりまとめ、日本語教育学会、中部教育学会及び研究紀要にて成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
今年度(H28年度)は、予定していた日本語学校スバル学院(岐阜)野田静穂氏の事例研究は、日程調整ができなかったため、実施することができなった。そのため、次年度繰越額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017(H29)年度実施することが決定している。
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