2017 Fiscal Year Research-status Report
心身の状態を表すオノマトペの習得研究―医療福祉分野への貢献を視野に入れて―
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15K02670
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Research Institution | Sonoda Women's University |
Principal Investigator |
吉永 尚 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (70330438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 泰 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60324373)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際的医療福祉人材の養成 / 身体感覚表現語彙 / 擬態語動詞 / アンケート質問紙調査 / 日中英対訳用語集 / スマートフォン用無料アプリ公開 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的医療福祉人材養成の現場で用いられる身体感覚表現語彙を中心に研究した。「ずきずき」「どきどき」など心身状態のオノマトペは現場使用度が高い割には日本語教育では積極的に指導されておらず、文法面でもこれらの擬態語動詞は一括して形容詞に類似した状態性が高いものとみなされることが多かった。これらの擬態語動詞を意味用法で分類し、それぞれの動詞性について調べ、「開始時」「終了時」などを特定できる時間性や非能格性などの動詞性をもつものもある程度みられることがわかった。また、形容詞的に用いられるもの、副詞としてのみ用いられるものについても意味用法によって分類し、ぞれぞれの語彙特性について考察し、これらの結果を学会発表、論文集で発表した。 さらに、これらの擬態語の習得について国内外の日本語学習者にアンケート質問紙調査を実施し、習得状況について調べた。(国内15校、中国・台湾24校) 現時点での統計結果では、各語彙の文法的知識(品詞認識)が正用に大きく影響することが推測され、個々の意味情報に加え「する」や「だ」の付加の可否に関する知識が習得に必要であることがわかった。 また、心身の擬態語をはじめ医療福祉関係の用語を日本語・中国語・英語の三か国語に対訳したデータ(現在約2800語)をまとめてスマートフォン用無料アプリとして公開している。また、これらに医療福祉現場で多用される会話集を補足し、ハンドブックとして一冊の本にまとめ、『介護・看護従事者のための日中英対訳用語集―「ずきずき」「はっと」は中国語・英語でどう言う?―』(吉永尚・廣部久美子,2018,和泉書院)として出版した。 従来の日本語教育において、具体的な擬態語研究は少なく、特に心身の状態を表すオノマトペに特化した習得研究は国内外ともに未だ前例がない。最終的には、実態調査に基づいた言語的考察をいかした効率的な指導法について考えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心身の擬態語をはじめ医療福祉関係の用語を日本語・中国語・英語の三か国語に対訳したデータ(現在約2800語)をまとめてスマートフォン用無料アプリとして公開し、また、これらに医療福祉現場で多用される会話集を補足し、ハンドブックとして一冊の本にまとめ、『介護・看護従事者のための日中英対訳用語集―「ずきずき」「はっと」は中国語・英語でどう言う?―』(吉永尚・廣部久美子,2018,和泉書院)として出版することができた。 これらの執筆・編集作業には多大な時間と労力を費やしたが、一定の成果を挙げることができたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
心身の擬態語の習得について国内外の日本語学習者にアンケート質問紙調査を実施し、習得状況について調べた(国内15校、中国・台湾24校)が、より効率的な指導法を考案するためには、調査結果の精査やさらなる重層的な調査が必要である。 今後は調査結果資料の分類整理と、より調査ポイントを特定したアンケートを実施し、誤用傾向特定の信頼性を高めていきたい。 従来の日本語教育において、具体的な擬態語研究は少なく、特に心身の状態を表すオノマトペに特化した習得研究は国内外ともに未だ前例がないので、実態調査に基づいた言語的考察を深化させていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 当該研究には大量の言語資料収集が必要である。できる限り言語資料収集を実施したが、言語習得の立場から誤用傾向を特定するためにはさらに多くの資料収集が必要である。また、調査資料の結果集計には多大な時間と労力が要求され、さらに作業を持続していく必要性があるためである。 (使用計画) 上半期は引き続き調査資料の収集分析を行い、下半期は進捗状況と終了期日を考慮に入れ総括作業を行う。また、研究成果発表に向けて、研究報告書の作成および論文執筆を遂行する。
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