2018 Fiscal Year Research-status Report
英語による授業(EMI)実践に必要な諸要素の可視化とFDのための体系化
Project/Area Number |
15K02684
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
桑村 昭 愛知県立大学, 入試学生支援センター, 准教授 (80625393)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 英語による科目授業(EMI) / EMI / 教員 / EMI実践に必要な構成要素 / 可視化・体系化 / 隣接分野(TESOL、ITA、CLIL) / 内容言語統合学習 / FD(教員の資質開発) |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アジア圏大学でのEMI実践と英語圏大学でのEMI教員研修に関する国際教育会議等での聞き取り調査、研究成果の発表、質問紙調査協力者へのフォローアップ、EMI実践に必要な構成要素の抽出と整理作業を各々行なった。 アジア圏大学の調査では、東アジア(台湾・韓国等)、東南アジア(インドネシア等)、及び中東(カタール等)の各大学関係者からEMIの実施状況を聞くと共に関連資料を収集した。その結果、紆余曲折を経て現在の英語非母語話者教員主体の安定的なEMI実施体制に至った台湾の大学の経緯など、EMI教員の任用が主要課題として残る日本の大学と比べ、アジア各大学の準備度合の高さが垣間見えた。一方、英語圏大学対象の調査では、州立デラウェア大学(米国)へ視察訪問し、同学集中英語教育課程(ELI)の教員複数名から聞き取りを行ない、外国人留学生TA(ITA) や外国籍大学教員対象の研修の実績について確認ができた。 当年度の研究成果については、国内外学会での口頭発表4件、論文記事の執筆2本(1本は投稿中)という形で還元した。具体的には、NAFSAフィラデルフィア大会での英語圏・非英語圏大学間交流におけるEMIの役割に言及したポスター発表、日本比較教育学会での2016年質問紙調査結果を交えての口頭発表、同集計結果を掲載した日本の大学のEMIの課題に関する留学専門雑誌への寄稿、QS-Apple ソウル大会でのEMIと教員対象専門研修に関する口頭発表、全国語学教育学会(JALT)でのEMI実践における大学語学教員の役割拡大に関する口頭発表及び関連論文の投稿を各々行った。質問紙調査回答者へのフォローアップとして集計結果を専門雑誌論考への記載により報告した。 EMI実践の構成要素については、文献調査や研究交流者等との意見交換を通じて抽出と整理を進め、上述後半の発表機会に体系化に向けての案を提示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、EMI担当教員の状況およびニーズの把握と、それを踏まえてのEMI実践に必要な構成要素の可視化とFDの為の体系化の2段階からなるが、何れについても、より精緻な分析作業と成果全貌の発信の余地と必要性があると考えている。これまでの研究助成期間中、教員の状況については、2016年度末のEMI実践に関する国内外調査の集計結果を口頭発表等で機会あるごとに伝えてきた。ただデータの掘り下げが十分とは言えず、より精緻な分析による成果報告の必要性を感じ、今回の判断となった。 現在までの進捗状況をまとめると、まずEMI教員の現場の状況とニーズの把握のために実施した上述の国内及び欧州EMI関係者対象の質問紙調査の集計結果の概要について、2017年から2018年にかけて中間発表として国内外の関連学会で報告すると共に、それについての学会参加者からのフィードバックを踏まえての論文記事も投稿した。当初予定していた英語圏側のFDの取組み例である英語非母語話者大学教員対象の豪州大学研修プログラムの参与観察は、為替レートの関係で予算の調整が上手く行かなかったため渡航前月に断念し、米国大学の視察調査に留めた。 一方、EMI実践に必要と思われる構成要素の可視化と体系化については、国際学会等フィールドでの情報収集やEMI隣接領域を含む関連文献の調査をベースにフレームワークを構築して学会発表や前述の投稿論文で試案として提示を開始し、現在完成に向けて引き続き作業を進めている。高等教育でのEMI実践関連の研究機運が国内外で益々高まり、EMI研究各論の成果発信も活発になってきている昨今、助成延長期間をフル活用して、可能な限りアップデートなものを取り込み、より精緻な内容に仕上げる準備は整っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
延長年度は、学際的な広がりを見せているEMI研究の動向を押さえながら、これまでの調査結果のフォローアップ、EMI実践現場状況・ニーズの整理、EMI実践に必要と思われる構成要素の可視化とFDに向けた体系化、以上の研究成果の論文記事への投稿および口頭発表を各々行なう。 EMI実践現場の状況やニーズに関する調査の結果については、単純集計と限定的な分析は終えているので、今後は関係者からの事情聴取や日欧含む非英語圏大学間の比較分析を更に進めて、データを掘り下げることにより、事象の包括的な分析と把握を試みる。 EMI実践に必要な構成要素の可視化及び体系化については、試案として当年度に提示したフレームワーク(技能、知識、意欲、アイデンティティ、支援、研究で構成)の中に、EMI実践を担う語学教員と専門科目教員の役割を具体的に盛り込み可視化させることにより、最終的にFDのための体系化を図る。この作業にあたっては、隣接分野(TESOL, CLIL他)での関連研究の成果や国内外学会での関係者とのEMI各論の議論を踏まえて適宜進める。最近は特にTESOL(英語教授法)分野におけるEMIの位置づけの議論と共に、留学生TA(ITA)教育の進展機運も高まりつつある。また、多様化する学生の目標言語習得や内容言語統合学習ニーズに対応する専門科目(コンテンツ)教育の必要性や語学教員とコンテンツ教員の役割の拡大と協働など、EMI各論の裾野が着実に広がっている。最終年度の今回はこれらの動向を踏まえながら、EMI構成要素の体系化を進めていく。 助成期間中の研究成果については、引き続き国際学会での口頭発表と論文記事の投稿を中心に還元し、今後益々活発化が期待されるEMI研究各論の深化に役立てていく。
|
Causes of Carryover |
上述のように、当初予定していた豪州大学での大学教員研修プログラムへの参加を再度見合わせ、米国大学研修プログラムの視察に留めた為、残額が生じた。 この額の使途については、今回承認頂いた延長期間中(令和元年度)に、国内を含めたアジア・太平洋圏での成果発表の参加費・旅費に充てるほか、可能であれば英国大学が当年度に国内で開始したEMI教員研修への参加も豪州参与観察の代替として視野に入れる。費用の見積段階で不足が生じた場合には、額は極めて限られるが所属大学の教員研究費で適宜補填する。
|