2015 Fiscal Year Research-status Report
協同グループ学習による英語教育の有効性:動機づけの観点から
Project/Area Number |
15K02685
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
広瀬 恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40145719)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 珠実 中部大学, 全学共通教育部, 准教授 (80613538)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 協同学習 / グループワーク / 動機づけ / 英語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、協同学習理論を取り入れたグループワークを用いた英語指導を日本人大学生に行い、その応用可能性を探究するだけではなく、実施上課題となる点も明らかにし、より効果的な英語授業モデルを構築しようとするものである。さらに、協同グループ学習を用いた英語教授法が学習者の動機づけを高める指導として有効かどうかを調べるものである。 平成27年度は、より効果的な協同学習を取り入れた英語指導法を構築するために、グループ編成の仕方に焦点を当て、編成方法の違いが学習者の協同学習に対する認識に及ぼす影響について調べた。具体的には、グループワークを用いた英語リーディング指導を大学生に行い、教師がグループを編成する授業と学生が自分たちでグループ決めをする授業をそれぞれ1学期間行った。両方のグループ編成を経験した学生に、既存の「協同作業認識尺度」に自由記述項目を付け加えたアンケート調査を実施した。「協同作業認識尺度」の「協同効用 」(9項目)、「個人志向」(6項目)、「互恵概念」(3項目)の3つの因子毎に平均得点を算出し比較した結果、「協同効用」は教師編成グループの方が僅かに高く、「個人志向」は学生編成グループの方が高い結果となった。一方で、「互恵概念」には2つのグループ編成に顕著な差はみられなかった。本結果は慎重に解釈されなければならないが、「協同効用」に関しては教師編成グループ編成の方が効果的である可能性を示唆している。 このグループ編成の違いについて調べた研究の他に、協同グループワークに加え特に学生の学習責任を高めることを意図した英語指導を行って、教師主導の指導法との相違を、質問紙による調査で明らかにする研究を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
英語指導に協同学習を取り入れた実践を研究分担者が担当する授業で年間を通して行い、計画通り質問紙調査によるデータ収集を行うことができたが、そのデータ分析を順調に進めることができなかった。その1つの理由は、平成27年度に購入したSPSSを用いた分析に思ったより時間がかかったことにある。このために、使用した質問紙項目の妥当性の検証をすることができなかった。また、実践を基にデータ収集をした授業数(研究参加者数)が限られたために、全体の研究計画に遅れが生じてしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、協同グループ学習を用いた英語指導法を大学の複数の授業で実施し、学習者の動機づけを高める指導として有効かどうかを、主として自己決定理論(SelfDetermination Theory)の「自律性」(autonomy)、「有能性」(competence)、「関係性」(relatedness)の3つの心理的欲求の観点から調べる予定である。現在までの研究では、協同学習理論を取り入れたグループワークを用いた英語の授業で受講生(処置群)を対象にデータ収集を行ってきたが、この指導方法の有効性を実証するためには、本指導法を取り入れていない授業の学生(対照群)からデータを収集して、処置群との比較を行うことが必要であると考えている。また、協同学習理論を取り入れたグループワークを用いた効果的な英語授業モデルを構築するためには、さらに、英語の授業で協同学習を取り入れたグループ活動を積み重ねることにより、学習者は動機づけが高まり、自律した学習者に育つのかを、縦断的に、質問紙とインタビューにより調べる予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、旅費と人件費・謝金を計画通り使用できなかったためである。研究代表者が学会(日本協同教育学会)で研究成果の発表を予定していたが、公務のために、決まっていた発表を直前にキャンセルせざるをえなくなってしまった。したがって、計画通り出張することができず旅費の執行もできなかった。また、研究分担者は収集したデータ分析を予定通りに進めることができなかったために、分析補助のために計上していた人件費・謝金を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、データ分析補助のための人件費・謝金を使用する予定である。また、平成29年度以降に研究代表者及び研究分担者が調査研究や学会発表を行うために旅費を計上する予定である。 申請書作成時点では、平成28年度にアメリカ合衆国で調査研究を行う計画であったが、平成27年度の研究の遅延によりこの計画は断念せざるをえなくなった。よって平成28年度の外国旅費は減額して請求した。しかし、研究分担者が、平成28年度にロシアで開催されるアジア英語教育学会において平成27年度の研究成果の一部を発表するために、外国旅費を使用する予定である。
|