2015 Fiscal Year Research-status Report
Threshold仮説の構築と検証:言語習得における大量のインプットの効果
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15K02688
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
吉井 誠 熊本県立大学, 文学部, 教授 (70240231)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多読 / 第二言語習得 / インプット / 英語教育 / 閾値 / 長期的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は実験調査を本格的に始めるための準備調整期間であった。多読の効果に関する文献研究を行い、本研究の理論的な土台作りを行った。その一環として、多読の効果に関するこれまでの主要な研究を振り返り、どれくらいの量を読むとどのような変化を遂げるのか、多読の効果が顕著になるために必要な多読量(読書総語数)について調べた。その結果、まだ概算ではあるが、10万語から50万語という指標が出てきた。この文献研究については、「多読の効果と読書量との関係に関する一考察」という論文にまとめて発表した。これまで多読の効果についての概要をまとめた論文(メタ分析)はあるが、具体的な読書量などについてまとめた研究はなく、先駆けとなった。 そして、この指標を検証する実証研究にも取り組んだ。大学1年生を対象とした多読関連の授業(Extensive Reading & Listening) において15週間にわたる実験を行った。40数名の参加者を対象に授業のカリキュラムの一環として多読に取り組み、読書量(10万語)と英語力の伸びとの関連性について検証した。現在、そのデータを分析中で、結果をまとめて発表の予定である。文献研究から推察される指標を実際に実証研究するものであり、理論と実践を結びつけながら本研究を進めていく一つのステップとして意義深いものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」でも述べたように多読関連の文献研究を進めることができた。第二言語習得における長期的な研究、多量のインプットによる学習者の変化ならびにその過程に着目した研究については、これから踏み込んで調査を行う必要がある。 10万語から50万語という指標を得たことは最初のステップとしては重要であったが、まだまだ幅が広くこれをいかに狭めていけるのか検証を継続していく必要がある。 学習者の変化についてさらに考察を深めるためにも、学習からのFeedbackをデータとして収集し分析していく必要がある。今回の実験でもアンケートという形で情報を得たが、そのデータについて分析を行い、質的研究の視点を含めた形で今後も検証する必要がある。 英語力全般に関する変化の指標としてTOEICの点数を参照したが、それ以外の指標について検討する必要がある。定期的に小まめにデータを収集し、学習者の変化を検知できる手法がないか、今後も探していかなければいけない。
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Strategy for Future Research Activity |
第二言語習得における長期的な研究についてOrtega & Byrnes (2008) を中心に文献研究を行う。同時に、大量のインプットを受けることによって起こる学習者の変化ならびにその過程に着目したこれまでの研究について、継続して調査を行う予定である。 10万語から50万語という指標を狭めていくための検証を継続していく予定である。今年度もExtensive Reading & Listening のクラスにおいて多読の読書量との英語力の関係について定期的に測定していく。英語力についてはTOEICの点数を参照しながらも、それに加えて語彙力についてVocabulary Size Test を使用し、語彙サイズがどのように変化するのかについても着目する。読書速度についても測定していく予定である。 大学3年生、4年生を対象としたゼミのクラスにおいても多読を実施し、多読量と英語力に関する変化について検証する。学習者の変化についてさらに考察を深めるために、学習者からのFeedbackをデータとして収集し分析していく。アンケートのみならず、インタビューという形でも学習者からデータを得て質的研究の視点を含めた形で今後も検証していく。ゼミのクラスにおいては、定期的に小まめにデータを収集し、学習者の変化を検知できる手法を探していく
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Causes of Carryover |
設備備品のうち、ノートPCとタブレットについては製品の更新時期を参照しながら最新で性能がより良いものを検討していたが、こちらの希望しているものが見つからず、当該年度は既存のものを他の研究者から借用したりなどした。当該年度の研究の成果をまとめ学会で口頭発表の予定であったが、目標としていた3月の英国での学会発表の時期が、勤務校の業務と重なり発表ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は昨年度の検討に基づき、研究に最適な設備備品を購入予定である。これまでの成果をまとめ、国内外での学会発表を実施する予定である。そのために旅費を活用していく。熊本地震で研究室が損傷し、ここまで購入した多読に関する研究書、多読本にもダメージが残ったため、これらの本の補充にも使用の予定である。
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Research Products
(1 results)