2015 Fiscal Year Research-status Report
社会的コンテクストの中にあるEFLライティング・タスクの開発
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15K02705
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
久留 友紀子 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (00465543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大年 順子 岡山大学, その他部局等, 准教授 (10411266)
金志 佳代子 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (20438253)
山西 博之 関西大学, 外国語学部, 准教授 (30452684)
Slater Kenneth 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10728778)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 英語教育 / 第二言語ライティング / タスク開発 / ライティングの社会的コンテクスト |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の英語教育において多くの場合これまでライティングのタスクは教室のコンテクストの中にだけあったが,本研究はそれに社会的要素を加え,学習者が真の読み手や書く目的・読む目的,スタイルやジャンルを意識しそれらを考慮して目的を達成するための方略のもとに書くことを学ぶことができるタスクを開発し,その効果をテクストの他,気づき・動機づけ・方略など複数の観点から測定することに取り組んでいる。 具体的には,①ライティング理論,社会文化理論,学習理論,言語習得理論などからライティングに関与する社会的要素,それぞれの重要性や関連性を整理すると同時に,②日本人がビジネス・学術・科学技術などの分野において英語でライティングを行う場合に関与する具体的な社会的コンテクストを,アンケートおよびインタビューによって調査し,次にその結果を基に,③理論と調査から明らかにされた社会的要素を取り入れたライティング・タスクを考案し,④考案したタスクを実践しその効果を検証することを計画している。 研究初年度の今年は①,②,④に関して研究を行った。まず①の理論的な根拠としてレイブ・ウェンガー (1993),ウェンガー・マクダーモット・スナイダー (1998),そしてヴィゴツキー (1978) を中心に,社会文化理論を中心に依拠することとした。②に関しては,アンケートの対象者,実施方法を決め,アンケートの作成を行った。現在大学または大学院に在籍している学生向けと社会人向けとに分け,様々な学部・専攻を対象とすることにした。インタビューについては対象者候補を検討した一方で,インタビューそのものはアンケートの結果を見て得たい情報を整理してから行うこととした。また④で必要となる効果の検証に関連して,ライティング・ルーブリックを使用することで学習者の気づきをどのように促進させることができるか,検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,社会的コンテクストの中にあるEFLライティング・タスクを開発し,それを実際に運用してその効果を検証することである。タスク開発のための具体的方策の一つとして,アンケートおよびインタビューを通して,日本人が実際に経験している英語でのライティングのコンテクスト-誰に対してどんな目的で書いているのかなど―について実態調査することとしているが,これについてアンケート実施の対象や方法を定めアンケートを作成することができた。またタスク開発においてもう一つの重要な方策は理論的な根拠のありかを定めることであるが,これについても社会文化理論の中に求められることを確認できた。 本研究のタスクを開発する際重要なことは,実際のライティングのコンテクストは具体的に見るほど多彩になると考えられることである。さらに,高校までの英語教育の現状や大学でのカリキュラムの現状は変わらないと想定し,カリキュラム上の時間的な制約や学生のライティング経験不足を考慮する必要がある。そこで,現実の場面の数だけライティング・タスクを考案するのではなく,限られた指導時間の中で行えるような,またいくつかの異なる学部の学生に対して同時に指導できるようなタスクを考案することが必要になるが,その方策としてこれまでにあるライティング・タスクに社会的コンテクストに関する意味付けを付加することを試みることとした。このようにタスク考案の方向性を具体的に定めることができたことは大きな進歩であった。またこれによりアンケートやインタビュー調査の分析の方向性も定めることができたため,全般的に概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って,特に次年度は次のように計画をしている。 ①今年度作成したアンケートを実施し,その結果を分析する。その結果を鑑みた上で,現在候補者としている社会人および学生の中から選んでインタビューを実施する。アンケートおよびインタビューでは,千差万別と思われる成功の秘訣を探すのではなく,教室でのライティングという行為の中にも学習者が社会的コンテクストに関して何か意味を実感できるような証拠といったものが提供できるよう,結果を整理・分析する。 ②理論的根拠として引き続き社会文化的理論の文献研究を行うほか,第二言語に限らず社会文化的理論に基づいたライティング指導の実践についても文献研究を進める。 ③理論と調査から明らかにされた社会的要素を取り入れたライティング・タスクのパイロット案を考案する。小規模な形で実施し,問題・必要があれば案の改訂を行う。 研究結果は,国内の英語教育またはコミュニケーション関係の学会で発表する予定である。また2年後に英語教育またはコミュニケーション関係の国際学会で発表ができるようその準備を進める。
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Causes of Carryover |
本研究は,これまで第二言語ライティング教育においてほとんど注目されてこなかった,ライティングの社会的コンテクストをいかに教室という教育の場面に持ち込むことができるか,それによって学習者に課題という以上のライティングの本来的意義や目的を見いださせることができるか,という問題に取り組んでいる。これにはアンケートとインタビューによって実態調査を行うことから始める必要があるが,実際には非常に多様であると思われるコンテクストを,カリキュラム上の制約や学習者の英語でのライティング経験不足なども考慮した上で実施可能なタスクの形に結びつけるには,まずタスク開発の方針を十分に検討する必要があった。そのためアンケートおよびインタビューは2年目に実施することとなり,本年度に予定していたアンケートとインタビューのための設備備品購入にあてていた分が未使用となったことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に予定していたアンケートおよびインタビューのための設備備品購入にあてていた分は,そのまま同じ目的で次年度に使用する予定である。次年度は国内での学会発表を行う予定であること,さらに2年後には国際学会での発表を考えているため,残りは学会発表の準備および旅費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)