2015 Fiscal Year Research-status Report
英語話者と日本語話者による重複発話と協調性の産出に関する異ジャンル間対照研究
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15K02763
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
竹田 らら 東京電機大学, 工学部, 講師 (80740109)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重複発話 / 異ジャンル間比較 / 日英語比較 / 協調性 / メタコミュニケーション / 異文化理解能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、親しい女子大学生同士のデータに加え、初対面(女子大学生と女性教員)同士のデータにも着手し、重複発話の頻度や種類、機能分布でどのような違いがあるか、英語と日本語を比較して分析した。そして、その分析結果が参与者間の協調性の産出に及ぼす影響を考察した。以下、主な研究実績を挙げる。
(1)第14回 国際語用論学会(2015年7月30日 於:アントワープ大学)で、“Collaboration through overlaps in English and Japanese: A cross-genre study of interactions between university students”を口頭発表。親しい女子学生同士の自由対話と課題達成談話の日英語分析で、重複発話の出現比と種類に違いが見られ、特に、課題達成談話で、あいづち的重複発話が主か、表現を一致させた重複発話が主かで異なることを示した。 (2)大学英語教育学会 第54回国際大会(2015年8月30日 於:鹿児島大学)で、「重複発話と協調性に関する日英語異ジャンル間比較―初対面の大学教員と大学生の会話を分析して―」を口頭発表。初対面同士の自由対話と課題達成談話の日英語分析で、ジャンルが言語や疎・上下という心的距離よりも機能の違いに大きく影響することを明らかにし、ジャンル間で異なる「語用規則」(村田 2015)を英語教育に織り込むべきだと提案した。 (3)日本英語学会 第33回大会(2015年11月22日 於:関西外国語大学)で、「重複発話の日英語比較:ジャンル・心的距離・言語の違いは協調性の産出にどう関わるか」を口頭発表(慫慂)。親しい女子学生同士、初対面同士の自由対話と課題達成談話の日英語分析で、言語や心的距離の違いよりも、ジャンルの違いが重複発話の頻度や機能、協調性の性質に大きく影響することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の研究計画で提起した問題に対し、複数の口頭発表や論文集への投稿を通して一定の成果を発表できている。このことは、「重複発話にみる場に応じた会話の進め方を、どのようにして英語教育に貢献できる形で提言していくか」という研究目標を達成する足がかりとなった。とりわけ、前出の大学英語教育学会 第54回国際大会における、日英語異ジャンル間比較の研究結果を英語教育につなげる試みは、次年度以降の研究遂行に大きく寄与するものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度以降は、以下3点の計画を推進する。
(1) 重複発話の機能分布において、発話を重複させる参与者ごとに、また、重複する内容に応じてどのような違いがあるか、その結果が参与者間の協調性の産出にどのような影響を及ぼしているかを、英語と日本語を対照させながら明らかにしていく。 (2) データ解釈や考察の妥当性と説得力を高めるべく、語用論・社会言語学・会話分析に加え、英語教育や異言語(異文化)コミュニケーション教育に関連する文献を拡充させる。 (3) 関連分野の学会や研究会などで定期的に研究の進捗状況を報告し、他の研究者から受けた助言をもとに、国内外の複数の学会誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
国際語用論学会(ベルギー)での研究発表について、2015年度中に英語で論文を執筆する計画があり、英文校閲費を予算に計上していた。ところが、執筆予定者の交代などで論文集の構成を変更せざるを得ず、要旨や論文締切の時期が大幅に遅れたため、論文執筆にかかる英文校閲費は支出されなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、2015年度中に執筆できなかった国際語用論学会での発表論文をはじめ、複数の研究論文を国内外の論文集や学会誌に投稿する計画である。その際、成果を国際的に公表すべく、英語での執筆も積極的に行うこととしており、その計画遂行の一助として、2015年度に未使用であった英文校閲費を充てる。
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