2016 Fiscal Year Research-status Report
英語話者と日本語話者による重複発話と協調性の産出に関する異ジャンル間対照研究
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15K02763
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
竹田 らら 東京電機大学, 工学部, 講師 (80740109)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重複発話 / 異ジャンル間比較 / 日英語比較 / 協調性 / メタコミュニケーション / 異文化理解能力 / 語用論教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、親しい女子学生ペアで、発話を重複させる参与者ごとに、頻度や種類、機能分布に見られる違いと、それが参与者間の協調性の産出に及ぼす影響を、日英語で分析考察した。また、女子学生ペアと初対面(女子大学生と女性教員)ペアでの重複発話の機能分布から、参与者同士の親疎に伴う距離感がいかに示されるか解明を試みた。以下、主な研究実績を挙げる。
(1)大学英語教育学会 第55回国際大会(2016年9月1日 於:北星学園大学)で、「A cross-genre analysis of functions of overlaps in English and Japanese student interactions: Focusing on the overlapper in a metacommunicative approach」を口頭発表。女子学生ペアの自由対話と課題達成談話の日英語分析で、発話を重複させる参与者ごとに機能が異なることを示した。中でも、課題達成談話で相手の考えを聞く際、日本語話者は内容への同意や理解を示すために、英語話者は内容への注目を示すために発話を重複させると述べた。さらに、この分析結果と自文化が有する重複発話との類似点や相違点を討論させ、英会話の指導と組み合わせることで、異文化能力の育成に貢献できると提案した。
(2)『社会言語科学』第19巻第1号(2016年9月発行)に、「重複発話から創出される協調性―親疎が異なった日本語相互行為の異ジャンル間比較からの一考察―」を掲載。日本人女子学生ペア、初対面ペアの自由対話と課題達成談話の分析で、女子学生ペアでは参与者間の親近感や共感性を、初対面ペアでは距離感や沈黙への気遣いを反映する重複発話が見られ、各参与者がジャンルに応じた協調性と、その枠内で親疎という対人関係に応じた協調性を強く意識していたことを浮き彫りにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度の研究計画で提起した問題に対し、口頭発表や査読付学術雑誌への投稿を通して、一定の成果を発表できている。特に、参与者ごとに重複発話の頻度や機能を分析し、重複発話にみる協調性の考察から、重複発話自体が親疎に伴う距離感を調整する機能を果たしうると提言したことは、重複発話がジャンルに応じた会話の進め方にどのように関わるのか、また、英語教育において、人間関係をより円滑にするための1つの方略として、重複発話をいかに指導していくのかという課題に対し、より深く考察する大きな契機となった。さらに、前出の大学英語教育学会 第55回国際大会における、日英語異ジャンル間比較による参与者ごとの重複発話の機能分析の結果から、異文化能力を育む目的で日英語の重複発話の傾向の類似点や相違点を討論させるという指導法を提案したことは、本研究課題が最終目標としている、日本語話者の特徴をふまえた形で、英語教育に役立つ教材作りへの指針を浮かび上がらせることに大きく寄与するものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、以下3点の計画を推進する。
(1) 重複発話の頻度や種類、機能分布において、重複する内容に応じてどのような違いがあるか、そして、その結果が参与者間の協調性の産出にどのような影響を及ぼしているかを、英語と日本語を対照させながら明らかにしていく。 (2) データ解釈や考察の妥当性と説得力を高めるべく、語用論や社会言語学、会話分析の手法で得られた結果を、英語教育や異言語(異文化)コミュニケーション教育の充実にどう応用させるかに関する知見を集めた文献を拡充させる。 (3) 日本語話者の特徴をふまえた形で英語教育に役立つ教材作りを模索するべく、日本人英語学習者の会話データから異文化コミュニケーション能力の育成を提言している研究者を招いた講演会や、第二言語教育に対して語用論的知見が果たす貢献について発表している研究者とのシンポジウムを企画し、講演会やシンポジウムの参加者との討論から得た知見や助言をもとに、国内外の複数の学会誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
洋書購入の際、注文した時点で示された額で見積もり、その後の購入品や校閲依頼の計画を立てていた。しかし、実際に洋書が届いた際の清算においてレートが変更されていたため、当初は想定しなかった差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は本研究課題の最終年度であるため、これまでに学術誌や学会で発表してきた研究成果や、本年に行う講演会やシンポジウムで得られた知見をまとめる形で成果報告書を作成し、その費用の一部に充てることとする。
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