2017 Fiscal Year Research-status Report
日中感情表現の対照研究―選好される言語形式からみるコミュニケーションの志向性
Project/Area Number |
15K02775
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Research Institution | Kagoshima Prefectural College |
Principal Investigator |
楊 虹 鹿児島県立短期大学, 文学科, 准教授 (20571607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠山 千佳 立命館大学, 法学部, 教授 (40383400)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 感動詞 / 日中対照 / 談話パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、研究代表者は、日本と中国の映画・テレビドラマを素材として、日中の感情表現の分析を行い、その成果を「感動詞ワークショップ」 で口頭発表を行った。また、分担者は、学習者の物語文におけるトピック管理や、学習者の第一言語(中国語)と第二言語(日本語)による指示表現の比較について、口頭発表 を行った。以下ではこれらの研究の概要を報告する。 日中の感情表現の分析は、前年度行った感情表現として用いられる感動詞の分析を深めた。前年度は、意味機能が類似する中国語の3つの感動詞の生起する場面の特徴を分析し、さらに中国語とその日本語訳出と対照して、日中間の共通点と相違点を考察した。今年度は、日本語の映画及びその吹き替え版を対象に、日中で用いられる感動詞の対応関係を分析し、日本語及び中国語における感情表出の感動詞の形式と機能の整理を行った。 分析の結果、日本語では、「あー」、「えー」、「へー」という3つの感動詞が多く用いられ、これら3つの感動詞は、中国語では、a, ai, aiya, aiyo, wa, wao, ngなどで訳されている。「あー」、「えー」「へー」は、生起する文脈により、賛嘆/感心などポジティブな感情表出と、不満/落胆といったネガティブな感情表現のいずれにも用いられるが、吹き替え版で用いられる中国語の感動詞と日本語の対応関係を分析した結果、一定の対応関係が明らか になった。 また、言語類型論の観点から、中国人学習者の第一言語と第二言語による指示表現の比較をした結果、複数の登場者が同じ場面にいる場合のように、情報の提示の仕方そのものが難しい箇所に、学習者の第一言語の談話パターンが第二言語使用場面に転移する可能性が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感情表現に関する先行研究を整理し、日本国内外の学会発表を複数回行い、今後の研究方向について、多角的に検証することもできた。専門分野の研究者が集まる研究集会、ワークショップなどで口頭発表を行い、その成果を本の一部にまとめる作業を進めているが、最終年度に行うべき研究全体の総括はまだできていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の分析結果の一部を、今年8月の国際大会での発表を経て、論文にまとめ、公表する準備を進める。また、ワークショップでの発表内容を基に、来年度出版予定の論文集の執筆に取り掛かる。これまでの分析を踏まえ、ポジティブな感情表現とネガティブな感情表現における日中の感情表出の特徴を分析し、これまでの日中のコミュニケーションスタイルの対照研究で多く言及されている「距離の取り方」の違いという 視点から考察を深めていく。 上の分析で得られた結果を日本及び海外の学会で発表し、中国語学、日本語学及び教育学、対照研究などの分野の研究者と幅広く意見交換する。前年度行った研究発表を論文にまとめ、学会発表等で得られた知見等を踏まえ、本研究課題全体の総括を行う。
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Causes of Carryover |
今年度の計画として、代表者が海外での学会発表1回及び国内の学会発表1回に旅費を使用する予定であった。しかし代表者は、学内校務が急激に増えることに加え、学会誌編集委員として特集号エディターを務めるなど学会活動の負担が重く、学会発表のための研究時間が十分に取れず、発表準備ができない状態にいた。以上のことが次年度使用額が 生じた主な理由だと考えている。そのほかにも、研究分担者として関わっているほかの科研費研究の研究活動も行い、複数の研究を同時進行することにより、本研究課題全体の総括に関わる研究活動に十分に行えなかったことが挙げられる。
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Research Products
(3 results)