2016 Fiscal Year Research-status Report
語用論的指導を奨励する教員サポート体制の整備とこれからの語学教員教育
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15K02802
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石原 紀子 法政大学, 経営学部, 教授 (90523126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教員養成 / 教員のプロフェッショナル・デベロップメント / 語用論的指導 / 多文化理解 / プラグマティックス指導 / ライフ・ヒストリー・インタビュー / 語学教員のアイデンティティー |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に米国政府研究機関であるCARLAで語用論の研究から教室指導に役立つ情報を抽出したデータベースの更新作業を進めた。リサーチ・アシスタントと協力し、発話行為の「招待」を新たに取り上げ、英語での招待の語用言語面と社会語用面の特徴を抽出した。サイトを管理するCARLAとも連携し、引用した文献の引用許可を申請・取得し、作成したサイトを出版した。その後ペルシャ語の招待についても同様のまとめを作成したが、ペルシャ語での言語サンプルの作成および引用文献の取得に多くの労力と時間を要した。 第二に、応募者が共著で出版した書籍に新たな内容を増補した改訂版を出版することも本研究の目標の一つである。この改訂の中で最も重要な観点となるのが国際語としての語用論の指導法についてであるが、本年度の3月のTESOL学会でこれについて発表する機会を得た。この観点について同学会にて当該分野の専門家と意見交換をすることができ有益な視点を得た。 第三に、語用論的ことばの使い方の指導について講演や研修などを通しこの領域での語学教員の発展に寄与することも研究計画に挙げていたが、本年度4―8月には大学院でのコースを提供した。また10月にはサンフランシスコ州立大学にて講演を行った。また外交官のトレーニングの一環として語用論的意識を盛り込む手法に関する書籍の一章を執筆し学会発表を行った。 次に、イタリア文部科学省の教員養成プログラムについてRichieri 博士と共著で事例研究を執筆し、語学教員の学びを検証し日本における小学校の英語教員の養成への応用の可能性を探った。その他日米の英語教員の多文化体験について深く調査するライフ・ヒストリー・インタビューを多数行い新たなデータ収集をした。このデータをもとに Menard-Warwick博士と論文を執筆し学会発表を行った。さらに新たな論文を共著者3名と共に現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
語用論の研究から教室指導に役立つ情報を抽出したCARLAのデータベースの更新作業では、ペルシャ語のサイトのペルシャ文字でのまとめの作成および引用許可の取得に予想外の労力と時間を割くことになった。しかしあまり知名度のない言語やその研究について報告することは重要であるため、それなりの価値がある活動であったと考えている。2017年度にはできるだけ早くペルシャ語の招待についてのサイトを立ち上げたい。またブラジルの研究者から招待を受け、ブラジリア大学と語学学校での講演を依頼されたが、治安やビザの懸念から出張を行わない決断をしたため、残念ながらブラジルの語学教員の研修に携わることができなかった。その他の研究は、ほぼ当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたデータベースの更新に関しては、スペイン語での招待についても2017年4月現在原稿をまとめつつある。本年度中に、可能であれば新たな発話行為についても原稿を執筆し出版に備えたい。また「招待」のサイトがすべて完了した後にはそのサイトの周知活動も進めたい。 また上に述べた著書の改訂・増補は比較的大規模で、分野への影響もあると考えられるので、それなりの時間をかけて最新の文献を読み、それを語学教員にもわかりやすい言語で表現することが必要である。本年度、国際語としての英語の語用論的ことばの使い方について見解を深めたため、次年度にはこの観点をすべての章に取り入れ、改訂を進めたい。2017年夏までにできる限り第一草稿を仕上げ、そこから約1年かけて第一草稿にさらに加筆するのが目標である。さらにNguyen 博士、Vellenga博士、Eslami博士、田口直子博士、松本由美博士など、米国内で活躍する研究者の専門分野に沿ったフィードバックを事前に得て原稿を改善することも目標としている。 新たなデータ収集に関しては、在外研究先大学の共同研究者であるMenard-Warwick博士と共同執筆した論文の出版にこぎつけたい。学会発表はすでに行ったが、出版原稿は現時点で国際査読ジャーナルの査読後の改訂中である。またこのライフ・ヒストリー・インタビュー・データをもとにTeacher identity/agencyの観点から3人の米国の共著者と論文を作成中であるので、6月までに仕上げ、国際査読ジャーナルのこのトピックの特別号に受け入れられるよう努めたい。ライフ・ヒストリー・インタビューを用いた質的研究は初めてであるので、共著者との協力が大変参考になっている。同インタビュー・データを利用した新たな教員養成の研究についても可能性を探り、少なくともあと数点の論文執筆へとつなげられればと期待している。
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Research Products
(17 results)