2017 Fiscal Year Research-status Report
語用論的指導を奨励する教員サポート体制の整備とこれからの語学教員教育
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15K02802
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石原 紀子 法政大学, 経営学部, 教授 (90523126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教員養成 / 教員のプロフェッショナル・デベロップメント / 語用論的指導 / 多文化理解 / プラグマティックス指導 / ライフ・ヒストリー・インタビュー / 教員アイデンティティー / 教員エイジェンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、米国政府研究機関であるミネソタ大学のCARLAの語用論研究データベースの更新作業を継続した。本年度はアシスタントと共に「挨拶」の項の草稿をまとめた。アメリカ英語・オーストラリア英語・フランス語の挨拶に関する過去の研究結果を抽出し、現在CARLAの協力を得て文献の引用許可を申請中である。 第二に、応募者が共著で出版した書籍の改訂版を出版することも本研究の目標の一つである。幸いこの書籍の出版社から改訂を持ち掛けられ、共著者と改訂計画を検討した。その結果、共著者とは研究の方向性が変わってきたために、今回は主に独自で改訂することになり、共著者の執筆は一章のみに留まることを決定した。改訂計画は、同分野の6名の研究者による匿名の査読を受け、その後書籍の改訂契約の締結に至った。またその査読結果に基づき改訂計画に再び加筆してRoutledgeの編集者と数回の打ち合わせをし、2020年の草稿提出に向けた計画に合意した。この改訂で最も重要な観点となるのが国際語としての語用論の指導法についてであるが、本年度には田口直子博士とこれに関する論文を共著し、それを3月のアメリカ応用言語学会のシンポジウムにて発表する好機も得た。 第三に、語用論的ことばの使い方の指導について講演や研修などを通しこの領域での語学教員の発展に寄与することも研究計画に挙げていたが、本年度10-2月には大学院でのコースを提供した。また2018年度7月にはミネソタ大学CARLAにてオンラインで大学院コースを提供する依頼を受けたため、本年度6月にはオンラインでの指導法についてのコースを受講し、現在準備を進めている。 その他、2016年度には、日米の英語教員の多文化体験と言語使用・言語指導について深く調査する新たなデータ収集をしたが、このデータをもとに共著者3名と共に執筆した査読論文が審査を通過し、現在再度改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミネソタ大学CARLAのデータベースの更新作業では、アシスタントが新たな職に就き他の州へ転居したため、挨拶の項をまとめるのに時間を割くことになった。また比較的新しい文献を使用するとオンライン・データベースでの引用が許可されにくいことが判明し、それらの文献を削除するための草稿の改訂を余儀なくされることになり改訂作業に遅れが生じた。 その他の研究は、ほぼ当初の計画通りに進んでおり、また語用論的ことばの使い方と指導法とを多文化の経験や理解 (translingual practice) と捉え、教員アイデンティティーやエイジェンシーの観点から論じる新たな方向性へと発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたデータベースの更新に関しては、前述したように新たな文献を利用することで困難が生じたため、今後は「招待」と「挨拶」の項の完成を目指しその周知活動に力を入れたい。2018年7月に行う教員養成コースでの利用も奨励する予定である。 また上に述べた著書の改訂・増補は比較的大規模で分野への影響もあると考えられるので、最新の文献を研究しそれを語学教員にもわかりやすい言語で表現することが肝要である。本年度、国際語としての英語の語用論的ことばの使い方について見解を深めたが、同時にその知見を言語指導の現場に取り入れる難しさも体感することになった。次年度にはこの改訂を進めながら、現場の語学教員からも協力を得て草稿に関するコメントを募り、教員にとって実際に利用価値の高い書籍としたい。 新たなデータ収集(ライフ・ヒストリー・インタビュー)に関しては、このデータをもとにTeacher identity/agencyの観点から3人の米国の共著者と論文を執筆し、厳しい査読2回を経てようやく掲載が決まったが、まだ最終改訂中であるので、無事国際査読ジャーナルのこのトピックの特別号に受け入れられるよう努めたい。
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