2015 Fiscal Year Research-status Report
小学生の英語運用能力向上のための教育プログラム構築への研究
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15K02803
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
米田 佐紀子 北陸学院大学, その他部局等, 教授 (70208768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 洋一 北陸学院大学, その他部局等, 准教授 (70406809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 小学校英語 / 4技能 / 英語運用力向上 / ケンブリッジ英検 / 動機づけ / Web会議 / コミュニケーション力 / 異文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケンブリッジ英検のStartersレベルの模擬試験(4技能)を4~6年生を対象に5・9・2月と3回実施した。また同検定の公式試験を11月に5,6年生を対象に実施した。動機づけ調査は、模擬試験の時期に同時に実施した。Skypeを用いたWeb会議は、オーストラリアの姉妹校の同学年の児童と英語と日本語で行い、その様子をビデオで記録した。また、保護者の理解や評価も影響を持つという先行研究を基に、質問紙調査を行った。また、ケンブリッジ英検機構との連携で成果を上げているというベトナムのホーチミン市の小学校視察を10月に行った。 ケンブリッジ英検模試では動機づけと得点とに高い相関がみられ、先行研究の追認となった。6年生の模試結果ではリスニング力がStarters(CEFR Pre-A1)レベルの9割、リーディング・ライティング力は約7割となり過年度生より上がった。一方、公式テストでは得点が高くてもWeb会議ではコミュニケーションスタイルができておらず、課題が浮き彫りとなった。保護者への質問紙調査からはWeb会議を高く評価する傾向が見られた。 ホーチミン市の小学校視察では、5年生でCEFRのA1レベルの授業を英語のみで行っており、児童へのインタビューは自然なやり取りができることを確認した。明確な目標提示・家庭との連携づくり・公教育としての取組が成果に繋がったと考える。ベトナムはフランス植民地だったことからアルファベット文字が日常生活で用いられており、事情が異なる日本と単純な比較はできないが、公教育としての取組・保護者との連携・明確な到達目標の提示が効果を上げた要因と考えられた。児童の力に応じて、週あたり2・4・8時間のコースがあり、Oxford大学出版の教科書をベトナム版で作成し英語を身近に感じさせる工夫があったり、到達目標を明示するなど公教育の姿勢・支援が要因と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心は英語運用力の向上にWeb会議が有効であるか否かを明らかにすることである。初年度はWeb会議の効果の尺度項目と妥当性を確認するためのプレ調査の時期としてとらえ、まずデータ収集を中心に行った。学力調査としては、ケンブリッジ英検の模擬試験(4技能)と公式試験(学力調査)、動機づけ調査には質問紙を用いて実施した。Web会議の効果については、児童の言語・非言語的側面に加え、感情状態を測定する尺度項目の開発と確定をするため豪姉妹校児童とWeb会議をする協力校児童の様子を観察した。また、自由記述によるアンケートや聞き取りによりデータを収集した。 Web会議では日本人児童と豪姉妹校児童との交流を実施し、ビデオ撮影した。コミュニケーション能力向上という観点からすると、CEFR Pre-A1(1語での返答)レベルの日本人児童が英語でコミュニケーションをWeb会議で豪児童と行うことの課題が示された。用意した台本を伝える形式では言いっぱなしになるが、クイズ形式にすると食い入るように画面を見つめることが分かった。コミュニケーションを取りたくなるような仕組み作りが重要であることが示された。一方、児童の知識で対応できるような問題作り等、事前の配慮が必要なことが示された。 上記の日本における調査に加え、ケンブリッジ英検を用いた海外での取り組みを視察・意見交換し、知見を得るため、2015年10月にベトナムホーチミン市の小学校視察を実施した。児童も教師も高いコミュニケーション力を持っていた。英語専門教師はCEFR A2~B2の英語力を持ち、英語教育を大学で専攻した教師が指導に当たっていた。ICTと伝統的な指導法をうまく混ぜ合わせながら指導していた一方で、ICTを用いることは手間や時間がかかるとのことだった。海外の児童との交流等はないが成果が出ており、今後日本の小学校への示唆が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は1年目に引き続きに見えた課題に主に取り組む。具体的には、(1)Cambridge English: Starters模試 4技能、公式テスト(2)英語に関する調査:動機付けと国際指向性に関する質問紙(3)ポートフォリオによる自己省察とパフォーマンス評価(毎授業時間)(4)Web会議調査: 観察・聞き取り・パフォーマンス評価 (学内)である。2017年には、豪姉妹校が来日するため、対面コミュニケーション調査(観察・聞き取り・パフォーマンス評価)も行う。交流の様子をWeb会議での交流と比較することができ、Web会議と対面の相違点を浮き彫りにする。 実施手続きとして、(1)~(3)について、英語担当教師が英語の時間に実施する。(4)については英語担当教師および分担者の西村が加わって実施する。(3)Web会議の効果については、先行文献等と実際の児童の様子とを往還しつつ、パフォーマンス評価を行う。(松下, 2007)を参考とした評価観点・項目・基準が必ずしも確定したとは言い切れないため、引き続き研究・分析を行う。 初年度の結果をまとめ学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
当初旅費に50万程度かかると見積もっていたが、実際にはそこまで費用がかからなかったことから、その差額分が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にはCEFRの視点をよりよく理解してもらい、実践に活かすため、協力校の教員へのケンブリッジ英検に関するトレーニングを取り入れる予定なので、平成27年度の余剰分はこうした経費に使用する。
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