2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02816
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
赤嶺 守 琉球大学, 法文学部, 教授 (20212417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 台湾引揚げ / 沖縄県出身者 / 琉僑 / 沖縄同郷会連合会 / 沖縄僑民総隊 / 琉球籍官兵集訓大隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、史資料に基づく研究及び引揚げ者や関係者への聞き取り調査という二つを基軸としたオーラル・ヒストリーの研究手法を採っている。沖縄県出身者の台湾引揚げに関する資料は、送還を実施した中華民国政府の引揚げ資料を多く綴った『政府接収台湾史料彙編』や、送還業務に従事した日僑管理委員会の文書記録を編纂した『台湾引揚・留用記録』などが既に刊行されており、その引揚げの実態の大枠を知ることができる。 しかし、実際に戦後の混乱した台湾で、沖縄県出身者がどのように相互扶助組織を立ち上げ、生存の仕組みを作り上げ、そしていつ・どのような経緯で引揚げにたどり着いたのかについては、そうした資料から明らかにすることはできない。台湾では外交部档案・中国国民党档案・国史館档案といった戦後の行政文書の公開が進み、そうした資料群の中には多くの沖縄県出身者の引揚げに関わる資料が含まれていることから、前年度に引き続き、そうした収蔵機関における資料の調査・収集をおこなった。またその他に国家図書館にも関連資料が多く保管されていることから、そうした資料についても併せて調査した。 さらに、台湾において沖縄県出身者を統轄する役目を負った「沖縄同郷会連合会」や「沖縄僑民総隊」、そして引揚げ業務にあたった沖縄出身兵で構成された「琉球官兵」らの実態を把握するため、台湾引揚げ者の「体験記録」を採録した。実施している引揚げ体験者へのインタビューについては、対象者を広げ証言の採録を継続した。特に今年度は「琉球官兵」について詳細に聞き取りをおこない、そこから「沖縄同郷会連合会」や「沖縄僑民総隊」との関連についても知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年同様、戦後台湾で、沖縄県出身者の引揚げをおこなうために結成された「沖縄同郷会連合会」「沖縄僑民総隊」、そしてまた実際に基隆港で引揚げ業務に従事していた「琉球籍官兵集訓大隊」について、証言・関連資料の採録や収集が順調に進んでいる。台湾側の行政文書である国史館蔵「引揚げ関連档案」、中央研究院近代史研究所蔵「外交部档案」、中国国民党党史館蔵「中国国民党档案」等の調査収集に関しても予定通り進み、台湾側の送還体制や行政措置などについても概ね研究を順調に行っている。また引揚げ体験者の証言採録についても、台湾協会沖縄支部の協力を得て、プライバシーにふれる問題が起きないよう十分に注意を払いながら、証言採録が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が研究の最終年度であることから、台湾側の行政文書である国史館蔵「引揚げ関連档案」、中央研究院近代史研究所蔵「外交部档案」、中国国民党党史館蔵「中国国民党档案」等の調査収集に関しては、研究を体系化する上で必要となる関連資料の最終的な綿密な調査・収集をおこなう。またこれまで実施してきた引揚げ体験者へのインタビューについても、引揚げ体験者が高齢化し、入院等で経験者へのインタビューがおこなえない事態も生じていることから、喫緊の問題として、調査及び証言の採録を急がなければならない。同時に採録した証言の文字起こし作業を実施し、研究成果報告として『沖縄県出身者台湾引揚げ証言集』を刊行する。
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Causes of Carryover |
採録した証言の文字起こし作業を実施する予定であったが、今年度は証言の採録に多くの時間をかけた。文字起こしについては、採録資料全体を概観し編集の方針を決定する必要が生じたため、体系的研究に繋がる十分な検討をおこない、文字起こし作業にかかる人件費については次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度前半に集中的に採録した証言の文字起こし作業を実施し、『沖縄県出身者台湾引揚げ証言集』の刊行に向けた作業に入る。
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Research Products
(1 results)