2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02822
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 講師 (20387971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水利権 / 水利組織 / 資源配分 / 村落連合 / 碑刻 / 社会構造 / 民族構成 / 回族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、水利紛争に関わる碑刻史料のデータベース化を進めるとともに、研究対象とする中国黄河中流域のうち、陝西省東部における水利権と水利組織の考察を主たる課題とした。2015年8月23日から8月31日にかけて、研究協力者の飯山知保および李大海とともに陝西省(西安市、蒲城県、大リ県、潼関県、華陰市、華県、渭南市)における現地調査を実施し、水利碑および関連史料の収集を行った。さらに、研究を進める中で、同地域における地域社会の歴史的変遷を明らかにするためには19世紀におけるムスリム蜂起によって生じた社会構造や民族構成の変化を理解する必要があることが判明した。そこで、当初の予定には含まれなかったが、2015年8月31日から9月5日にかけて青海省(西寧市)および甘粛省(酒泉市、瓜州県、敦煌市)における現地調査を実施し、ムスリムと農業水利および地域社会に関する史料を収集した。 また、水利権と水利組織に関する研究成果の公開を目的として、2015年6月6月に京都府立大学にて開催された洛北史学会第17回大会、同年6月22日から26日にかけてオランダ・デルフト市のデルフト工科大学にて開催されたWater History Conference Delft 2015、同年12月6日に大阪市立大学にて開催された国際シンポジウム、2016年3月5日に開催された大阪歴史科学協議会3月例会において研究発表を行った。これら発表においては、13~19世紀の中国北部(山西省・河南省・陝西省)の事例から、水資源の分配・管理に関わる主体と方法の歴史的変遷を辿り、その変化に伴って発生した水利権売買という事象に対する国家と地域社会の認識と対応を明らかにした。その他、明清時代の陝西・山西地域における地下水灌漑に関する論文を執筆し、理論の展開、情報の伝播、認識の変化がいかになされたのかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、予定していた陝西省東部における現地調査を遂行することができただけでなく、新たな課題としての社会構造・民族構成の問題を探るために青海・甘粛両省における現地調査を実施することができ、想定していた以上の成果を上げることができた。その一方で、当初の計画では2015年10月22日から25日に香川県高松市にて開催されたThe Third Conference of East Asian Environmental Historyにおいて本研究課題に関する研究発表を行う予定であったが、同会議のネットワーク委員を務めることとなり、運営上の問題から発表を断念し、水問題に関連するパネルのチェアーおよびディスカッサントを務めざるを得なくなった。ただし、研究公開に関しては、予定していたオランダでの国際会議に加えて、予定していなかった2回の学会発表および1回の国際シンポジウムでの報告を行う機会を得たため、全般的には順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関してはおおむね計画通りに進めることとするが、なかでも論文執筆につとめる。また、当初は予定していなかったが、2016年5月26日から28日に嶺南大学および香港大学にて開催予定の国際会議“EMPIRES OF WATER: Water Management and Politics in the Arid Regions of China, Central Eurasia and the Middle East(16th-20th centuries)”にてパネルのディスカッサントを務めるほか、9月24日から25日に中国政法大学にて開催予定の国際会議「銘刻文献所見古代法律和社会」にて研究発表を行うことが決定している。これら国際会議への参加を通して、新たな学術交流関係を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたより消耗費の支出が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に図書購入費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)