2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02822
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 准教授 (20387971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水利伝統 / 増刻碑 / 重刻碑 / 水利権 / 宗族 / 基層社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、山西省曲沃県に現存する水利関連の碑刻資料を分析し、王朝の時代を超えて水利権の根拠として受け継がれていく増刻碑と水利権の証明のためにある特定の時代の状況を復元する重刻碑との性格の違いを明らかにした。さらに伝統を作り上げるモノとしての重刻碑の意義を再評価し、さらに研究を進めるべき対象であることを指摘した。 具体的な活動としては、研究協力者の飯山知保とともに河南省霊宝県・陝県・三門峡市・メン池県・新安県および山西省平陸県における水利施設と水利碑の現地調査を行い、伝統的な水資源管理と現状に関する聞き取りを行った。 また、2016年9月24日に北京市にて開催された“銘刻文献所見古代法律和社会”学術研討会に参加し、研究発表「旧章再造:以山西曲沃県“一石三記”与“三石一記”水利碑為中心材料」を行い、同年12月3日に山西大学にて開催された第2届中国人口資源環境与社会変遷学術研討会に参加し、研究発表「旧章再造:以増刻、重刻的水利碑為基礎資料」を行った。また、2017年2月12日に京都大学人文科学研究所にて開催された環境史研究会ワークショップ「人新世と環境史における時間」において、研究発表「伝統の継承と断絶:「歴史」の連続、復元、消失」を行った。 その他、2016年5月に香港で行われた国際ワークショップ"Empires of Water: Water Management and Politics in the Arid Regions of China, Central Eurasia and the Middle East (16th-20th centuries)"において、エジプト(18世紀)、中央アジア(19-20世紀・カザフスタン)、中国西部(18-19世紀・新疆)の灌漑水利史に関する3報告に対するコメントを担当し、量的拡大と質的転換に関する点から整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては当初予定していた現地調査を行い得たことに加えて、当初の予定にはなかった国際シンポジウムでの2度の研究発表と国内の関連研究会での研究発表を行うことができたことにより、本研究課題に関する成果の公開を進めることができた。しかし、2016年度内に予定していた学術誌への投稿に関しては、論文自体の掲載は決定されたものの、年度内での発行には間に合わなかったために、論文執筆と公刊の点で課題を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は論文執筆と公刊による成果公開に重点を置き研究活動を推進する。具体的には、2017年度内に水利権売買に関する論文が『歴史科学』に掲載予定であるほか、『中国史学』に水利社会史に関する研究動向を執筆し、『東洋史研究』に水利権の公共性に関する論文を投稿する予定である。また、2017年10月に中国天津市にて開催予定のThe 4th Conference of East Asian Environmental Historyへのエントリーを済ませており、研究協力者である張俊峰のほか数名の研究者とともに水利権問題に関するパネルセッションを行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたより消耗品の支出が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に消耗品として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)