2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K02822
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 准教授 (20387971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水資源 / 水利碑 / 村 / 水利権 / 宗族 / 基層社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、これまでに収集してきた山西省・陝西省・河南省の水利碑の読解を進めるとともに、水の利用や管理に対して村や宗族がいかなる形で関与したのかという点について考察を深めた。 その過程において、井黒忍「近世・近代華北の水利権売買に関する一考察―山西・陝西・河南の事例に基づいて」(『歴史科学』229)を執筆し、2017年10月27日には中国・南開大学にて開催されたThe Fourth Conference of East Asian Environmental Historyにおいて、研究報告"Borders between the Self and Others: A Spatial Analysis of Local Communities Connected by Water in Shanxi, in Late Imperial China, Based on Canal Network Maps on Steles"を行った。 また、井黒忍「華北「水と社會」史研究の現状と展望」(『中国史学』27)において、21世紀になり中国において急速な進展をみせた「水利社会史」という研究方法に関して、代表的な研究を取り上げ、その成果と問題点を総括した。そのほか、2018年1月26日に京都大学人文科学研究所共同研究「転換期中国における社会経済制度」での片山剛報告「土地改革前夜、土地利用に対する共同規制と〈村の領域〉の存在形態:広東省高要県金東囲を中心に」に対するコメント「移動可能な資源をいかに捉えるか?」を行い、華北と華南における村の性格や役割の相違点と類似点について議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、当初予定していたワークショップを開催することはできなかったが、本研究課題に関わる論文と総論各一本を執筆し、国際学会にて研究報告を行うことができたため、おおむね順調な進展と評価した。また、新たな観点として、水の利用と管理に関わる村や宗族の役割を盛り込むことによって、水利権売買という事象を基層社会の歴史的な変化と絡めて、より総合的に捉えることが可能となった。これは今後の研究活動に資する大きな成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、論文執筆を継続して進め、『東洋史研究』誌に水利権の公共性に関する論文を投稿する。また、2018年6月に開催される近世史フォーラムにおいて、水資源の管理者としての宗族・村・公司に関する研究発表を行う予定である。さらに、2019年2月に「基層社会における水利用―村と宗族の役割」というテーマにてワークショップを開催し、本研究課題についての総括を行うとともに、新たな課題の発見に努める。
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Causes of Carryover |
H29年度に予定していたワークショップを開催することができなかったため、当該研究活動に要する資金の一部(135,366円)を使用することができなかった。当該資金については、H30年度に開催を予定するワークショップでのコメンテーター増員の費用として用いる予定である。
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Research Products
(3 results)