2018 Fiscal Year Annual Research Report
Water rights and water management associations in the middle reaches of the Yellow river basin in the pre-modern China
Project/Area Number |
15K02822
|
Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 准教授 (20387971)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 公水 / 私水 / 水利権売買 / 水利連合 / 水利伝統 / 水利秩序 / 公共性 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度においては、地域社会と水利の伝統との関係を考察した。その成果として、近世史フォーラム6月例会において研究報告「中国近世水権試論―水をめぐる「伝統」の形成過程」を行い、また、広島史学研究会大会において研究報告「重刻碑にみる近世山西の水をめぐる「伝統」の形成過程」を行った。また、同様の内容を「旧章再造:以一石三記与三石一記水利碑為基礎資料」(『社会史研究』第5輯)として公表した。 さらに本研究課題のまとめとして、大谷大学においてワークショップ「宗族と水利から華北の「村」を再考する」を開催した。歴史学、社会学、農学など異なるディシプリンを用いる5名の研究者が報告を行い、これらの報告に対するコメントを1名の研究者が行った。研究代表者も研究報告「18~19世紀山西の水利に見る村の役割―宗族との関係をまじえて」を行い、18世紀から19世紀における地震や火災などの自然災害や人心荒廃に伴う訴訟の頻発といった社会不安に対する地域社会の応対が、21村の水利連合として、あるいは宗族の結集として現出し、その際に伝統を確認するという名のもとに当時の状況を反映した形で村を単位として水利秩序および社会秩序の再編が図られたことを明らかにした。 さらに、考察を進め、19世紀末から20世紀初め、水利権売買により利益追求が進展する中で、独占・寡占による「私水」状態を依拠すべき状態とする官に対して、「公」に基づく私的所有の集積としての共同所有・共同利用が主張され、「公水」の語が現れることを指摘した。官も水争いの裁定に「公水」の概念を用いることとなるが、その際にも公議を担い、公の受け皿となったのが村であり、水権における公共性という概念は、村をその担い手とし、当該時期に「創造」されたものである可能性を指摘し、水利用に関する「公」と「私」の問題を今後の課題として提起した。
|
Research Products
(3 results)