2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02825
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法王 / 称徳 / 道鏡 / 「皇位天授」の思想 / 伊勢神宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)「皇位天授の思想」にみる孝謙・称徳期の「王権」の構造的転換について、仙台古代史懇話会において、「「皇位天授の思想」と法王道鏡」のテーマで研究報告を実施した。舎利出現に伴う道鏡法王就任の論理について、『続日本紀』の関連史料を詳細に分析する手法を用いたうえで、法王就任そのものが、皇位継承者であることを宣言するものでは無いことを明確にした。この成果は、従来から、法王が皇太子であるか否かの議論に資するとともに、孝謙・称徳期の「王権」構造では、仏を含む「天」による「皇位天授の思想」が、道鏡ではなく、天皇それ自身のために用いられていることも明らかとなった。(b)前年度公表した国分寺・国分尼寺の造営事業と「皇位天授の思想」に関わる中国・朝鮮の史料収集を進めた。また関連する韓国語の研究報告を翻訳することができた。(c)孝謙・称徳期における、伊勢神宮の転換をめぐる唐・新羅の史料収集を継続し、あわせて孝謙・称徳の出家や寺院造営に関わる史料も行った。なお、「「皇位天授の思想」と法王道鏡」では伊勢神宮の出した祥瑞にも言及している。(d)研究全体を海外と一般向けに発信することができた。まず、6世紀から12世紀の「王権」について述べた「「王権」研究と天皇の歴史的展開―死・身体・霊―」(韓国忠南大学・招待講演)では、孝謙・称徳期の「王権」研究の意義と現在の研究成果の一部に言及し、それらを紹介する機会を得た。一般向けの書籍である『仏教史入門ハンドブック』(法蔵館)では、「宗の成立と展開」と「大寺・定額寺から御願時へ」の各章を担当し、7世紀から10世紀までの宗や寺院に関するこれまでの研究成果をまとめているが、そのなかで、研究テーマである孝謙・称徳期やその頃の仏教史・政治史の意義について述べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a)国分寺・国分尼寺の造営事業に関する論文は、すでに前年度公表しており、予定より早い研究成果の公表ができた。また、本研究の中心である「皇位天授の思想」に関する研究成果の一部について口頭発表を行うことができた。この口頭報告を踏まえ、論文として公表する準備が整いつつある。(b)孝謙・称徳期の景雲一切経に関わる史料収集は資金等の関係により断念せざるを得なかったが、法華寺や嶋院に関わる史料収集を進めることができた。また伊勢神宮や唐・朝鮮の宗廟制、祥瑞に関する史料収集も継続して実施できた。ただし、今年度は「皇位天授の思想」の公表を優先したため、報告中に伊勢神宮の祥瑞について一部言及できたものの、これらの研究成果の全面的な公表には到らなかった。これらの点からおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度である。そこで、孝謙・称徳期の「皇位天授の思想」に関する論文の公表を優先して行うこととする。そのなかには、前年度公表した国分寺・国分尼寺の造営事業の内容と、その後の史料収集で新たに明らかになった点、さらに伊勢神宮やアジアの宗廟制度の研究成果を組み込む予定である。そのため、唐・新羅の史料収集を早めに終えるようにする。また、孝謙・称徳の出家に関わる研究成果を公表する。ただし、法華寺と嶋院に関しては概ね史料収集を行ったが、景雲一切経の調査・史料収集にあたっては、資金が不足しているため、研究期間内には十分にできないことが想定されてきた。そこで研究成果全体に大きな影響はないと判断し、この点の研究計画は変更したい。
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Research Products
(4 results)