2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the structural transformation of "kingship" about Emperor Koken and Syotoku
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15K02825
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 孝謙 / 称徳 / 道鏡 / 法王 / 国分尼寺 / 皇位天授の思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、孝謙・称徳天皇が観念した「天」の思想と仏教との関係を明らかにすることを目的に、「皇位天授」の思想と、道鏡が就任した法王についての検討を深めた。2017年11月には、学会で、研究成果を報告しており、それらをもとに、2018年2月に「盧舎那如来と法王道鏡-仏教からみた統治権の正当性-」と題した論文を入稿している(2018年度刊行予定)。この論文では、①道鏡が就任した法王という地位が、皇位継承者とはいえないということ、②仏教的「天」の言説が出現するのは、いずれも聖武太上天皇没後の孝謙・称徳天皇の言説であること、この2点を指摘したうえで、皇位継承者としての正当性に疑念が示されることのあった称徳天皇が、自ら故聖武天皇の仏教信仰を積極的に継承し、その権威を得ることで、自らの正当性を示すことに利用していたことを論じた。つまり、仏教的な「天」とは、不在となった後見者の代替であったことを明らかにしたのである。他方で、仏教に依拠するという点において、天皇を支える霊的な権威の変容をもたらしたことが予測される。また、2017年11月には、上記研究成果と関わる道鏡や孝謙・称徳天皇の施策について、陸奥国国分寺と国分尼寺の調査成果に重点をおきつつ、仙台市で開かれた一般向けの講演会で報告を行った。さらに、2018年2月には、東北大学で実施された国際シンポジウムにおいて、上記の研究に関連し、より広く天皇の権威の変遷についての報告を行った。 研究期間全体を通じて、当初目的としていたように、おもに「皇位天授」の思想を通して、仏教的「天」が、孝謙・称徳天皇自身の正当性と密接に関わる問題であることを明確にし、あわせて法王という地位が皇位継承者を示すものではないことと、国分寺・国分尼寺の政策がそれと一体であることを明らかにした。他方で、伊勢神宮との関係に関する研究成果は公表するまでには至らなかった。
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Research Products
(4 results)