2017 Fiscal Year Research-status Report
技術史的観点からみた古代宮殿・官衙・寺院造営と天皇家産機構の関係についての研究
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15K02830
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 建築生産 / 手工業生産 / 寺院 / 官衙 / 宮殿 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、(1)論文、古尾谷知浩「古代の木器生産」(『日本史研究』656号、pp.20-39、平成29年4月)、(2)論文、古尾谷知浩「八世紀の布帛生産と律令国家」(佐藤信編『律令制と古代国家』吉川弘文館、pp.52-81、平成30年3月)、(3)論文、古尾谷知浩「北浦定政「平城宮大内裏鋪地図解」」(『名古屋大学人文学研究論集』1号、pp.447-458、平成30年3月)、(4)共著書、佐藤信、小口雅史、古尾谷知浩他『古代史料を読む』上(同成社、総頁数309頁、執筆頁pp.271-188、平成30年3月、9784886217837、(5)学会発表、古尾谷知浩「文献からみた国・郡・寺院の「庁」における政務とクラ」(第21回古代官衙・集落研究集会、於奈良文化財研究所、平成29年12月)を公表した。(1)は、建築生産と同じく木を原材料とし、同時に生産されることも多い木製品について、正倉院文書などを用いて生産方式を明らかにし、天皇家産機構との関係を論じたもの。(2)は、建築労働者への給付にも用いられる布を含む繊維製品生産について、令制規定、延喜式規定などから明らかにしたもの。(3)は、都城研究の基礎資料である北浦定政「平城宮大内裏鋪地図解」を翻刻し、若干の解説を付したもの。(4)は、建築生産・手工業生産の現場で産み出された資料である漆紙文書について論じたもの。(5)は、平成28年度に公表した論文「国の「庁」とクラ」(『名古屋大学文学部研究論集』188号、pp.73-88、平成29年3月)の成果を踏まえ、郡家や寺院政所の「庁」の機能として「判」「捺印」があったこと、「庁」に近接して文書・印を収納するクラがあったことなどを明らかにしたもの。 以上の論文等から、建築生産、手工業生産、および官衙・寺院建築とその機能の問題について、独創的な成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、平成29年度には次のA・Bの作業を行うこととしていた。 A分析対象史料としては、『延喜式』等を主たる対象とし、法制的側面から国家と建築・手工業生産の関係の問題を検討する。 B必要物資ごとの分析としては仏像・調度品等の生産について検討する。 平成29年度の実績としては、Aについては特に前記業績(5)、Bについては特に前記業績(1)(2)として成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、分析対象史料として、出土文字資料等にも対象を広げ、中央のみならず地方官衙・寺院も含め、造営現場における資材・労働力の管理の問題を検討する。また、延喜式と出土文字資料をふまえて、宮殿・官衙の造営、調度品の生産について検討する。
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Causes of Carryover |
熊本地震の影響により、九州方面での調査ができなかったため。また、当初計画していた調査機器の更新を次年度に行うこととしたため。 平成30年度は、九州地方の調査を推進するとともに、調査機器の更新を行うために使用する計画である。
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