2018 Fiscal Year Research-status Report
技術史的観点からみた古代宮殿・官衙・寺院造営と天皇家産機構の関係についての研究
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15K02830
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 建築生産 / 手工業生産 / 寺院 / 官衙 / 宮殿 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、(1)論文、古尾谷知浩「文献史料からみた地方官衙と手工業」(地域と考古学の会・浜松市博物館・静岡県考古学会編『静岡県と周辺地域の官衙出土文字資料と手工業生産』、pp.67-74、平成30年6月)、(2)古尾谷知浩「文献からみた国・郡・寺院の「庁」における政務とクラ」(奈良文化財研究所編『地方官衙政庁域の変遷と特質』奈良文化財研究所研究報告第20冊、クバプロ、pp.125-132、平成30年12月)を公表した。(1)は、建築生産の前提となる手工業生産について、古代の地方官衙及びその周辺における実態を、文献史料から分析し、国や郡などの官が、生産経費を負担するなどして経営していたのはきわめて限定的であり、広範に民間の手工業が展開していたことを論じたもの。(2)は、平成28年度に公表した論文「国の「庁」とクラ」(『名古屋大学文学部研究論集』188号、pp.73-88、平成29年3月の成果を踏まえ、郡家や寺院政所の「庁」の機能として「判」「捺印」があったこと、「庁」に近接して文書・印を収納するクラがあったことなどを明らかにしたもの。 以上の論文から、建築生産、手工業生産、および官衙・寺院建築とその機能の問題について、特に技術伝達や形態の規制において官が主導した側面はきわめて限定的で、民間での技術交流、模倣等が重要であったことを指摘し、独創的な成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成30年度は、延喜式をはじめとする法制史料や、出土文字資料を分析することにより、地方官衙・寺院も含めて研究を進めることとしていた。これに対し、上記論文(1)で出土文字資料を中心として地方官衙における手工業生産の実態を明らかにし、論文(2)で、郡家、寺院などの建築生産の問題を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、出土文字資料を引き続き検討するとともに、延喜式・儀式書等から政務・儀式における建造物・調度品の使用のあり方を検討する。 さらに、最終年度の総括として、上記の課題Aをふまえて宮殿・官衙・寺院造営の全体像について総括を行う。具体的には、政務・儀式・法会における建造物・調度品の使用のあり方をふまえ、古代国家、天皇家産機構のなかで建造物を造営し、手工業製品を調達する歴史的意義について検討し、官僚制論・家産制論の理論的考察にまで深める。
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Causes of Carryover |
熊本地震の影響により、九州方面での調査ができず、また、台風被害の影響により、近畿地方寺院の調査ができなかったため。平成31年度は、被害の復旧に応じて調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)