2019 Fiscal Year Research-status Report
技術史的観点からみた古代宮殿・官衙・寺院造営と天皇家産機構の関係についての研究
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15K02830
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 建築史 / 手工業史 / 日本史 / 古代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、令和元年度には、次のA・Bの作業を行うこととしていた。A分析対象史料としては、出土文字資料について前年度に引き続き検討するとともに、延喜式・儀式書等から政務・儀式における建造物・調度品の使用のあり方を検討する。B必要物資ごとの分析としては、出土文字資料の検討を踏まえ、地方官衙・寺院の建築について検討する。さらに、最終年度の総括として、宮殿・官衙・寺院造営の全体像について総括を行う。 以上の計画に対し、令和元年度は、(1)論文、古尾谷知浩「伊賀国玉瀧杣と天皇家産制的建築生産」(『ヒストリア』279、2020年)、(2)古尾谷知浩「東京・増上寺子院群」(『木簡研究』41、2019年)、(3)古尾谷知浩「東京・天徳寺寺域第三遺跡」(『木簡研究』41、2019年)を執筆した。 (1)においては、天徳三年一二月二六日東大寺宛太政官牒(東南院文書)が、東大寺に有利となるように改ざんされているという、従来知られていなかった事実を出発点に、9・10世紀の玉瀧杣が、東大寺・修理職・冷泉院・雲林院・法性寺などの宮殿・天皇発願寺院の造営・修理のために利用されていたことを指摘した。このことにより、前代の奈良時代から平安時代初期にかけては、天皇家産機構が建築生産に必要な資材・技術労働力を融通しながら、宮殿・寺院の造営事業を行っていたこと、10世紀以降は、東大寺など有力寺院は、人的物的資源の排他的利用権を獲得しようとしていたことなどを明らかにし、独創的な成果をあげることができた。 (2)(3)は、出土文字資料についての報告である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来、令和元年度が最終年度に当たるが、新型コロナウィルスの影響により、年度末に必要な調査を行うことができず、研究の総括ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に研究の総括ができなかったため、補助事業期間延長承認申請書を提出し、これが承認されたため、次年度に補充の調査を行い、研究の総括を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、年度末に予定していた調査を行うことができなかった。そのため、補助事業期間延長承認申請書を提出し、これが承認されたため、次年度に補充の調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)