2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02831
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川合 康 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40195037)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 京都大番役 / 平氏権力 / 鎌倉幕府 / 摂津源氏 / 閑院内裏 / 大内守護 / 鎌倉番役 / 異国警固番役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、京都大番役の成立・展開について、Ⅰ平安末期、Ⅱ治承・寿永内乱期(文治年間以前)、Ⅲ鎌倉前期(建久年間から承久の乱以前)、Ⅳ鎌倉中後期の4段階に区分し、 (a)里内裏警固、(b)大内守護、(c) 院御所警固という3種類の警固役を明確に区別したうえで、実態的に解明するものである。 初年度の平成27年度は、Ⅰ・Ⅱの時期における(a)(b)(c)に関する史料検索を集中的に行った。Ⅰの時期については、『兵範記』『玉葉』『愚昧記』『顕広王記』『山槐記』『吉記』などの古記録を中心に、慈円著の『愚管抄』、鎌倉幕府編纂の『吾妻鏡』、『従三位頼政卿集』『建礼門院右京大夫集』などの和歌集、軍記物の『平家物語』諸本、『保元物語』『平治物語』などの検索を完了した。Ⅱの時期は、『玉葉』『山槐記』『吉記』『明月記』などの古記録、『吾妻鏡』や『平家物語』諸本、『平安遺文』『鎌倉遺文』などを検索し、史料収集を進めた。また、大阪大学総合図書館で閲覧できるジャパンナレッジを活用して、『群書類従』(正・続・続々)における「大番」「大内」「番役」文言を含む文献の検索も行い、従来あまり注目されてこなかった関連史料も収集することができた。これらの史料は、ノートパソコンを用いて一覧表への整理を進めた。 本年度の史料収集によって、里内裏警固・大内守護が12世紀半ば以降に整備された可能性が高いという所見を確認することができたため、当該期の研究書や史料集、特に貴族の邸宅に関する建築史関係の研究書を購入し、大内や里内裏諸門の配置などの検討を進めた。また、警固対象となった大内裏跡・押小路東洞院殿跡・閑院内裏跡などの京都市内の御所跡調査や、松浦市鷹島や福岡市の生の松原の石築地跡など、蒙古襲来時の異国警固番役関係地の現地調査も実施した。 本研究に関連する成果として、本年度は図書1件を公表し、1件の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成27年度は、京都大番役の成立段階にあたるⅠ平安末期、Ⅱ治承・寿永内乱期(文治年間以前)に時期を絞り、(a)里内裏警固、(b)大内守護、(c) 院御所警固という3種類の警固役に関連する史料を網羅的に検索することとし、史料収集を進めた。Ⅰの時期についてはほぼ完了しており、一覧表の作成を始めた。Ⅱの時期については、古記録の検索はおおむね順調に進んだが、『平安遺文』『鎌倉遺文』に収録されていない古文書類はまだ検索ができておらず、平成28年度も継続して史料収集を進めていく予定である。 本年度の史料収集・分析によって、以下のような知見を得た。まず(a)に関しては、里内裏警固が組織的に始められたのは、応保2年(1162)3月に新造された二条天皇の里内裏押小路東洞院殿に平清盛が宿直所を造り、清盛が「一家ノ者」で警固を始めた時点と考えられ、それが大番役として確認されるのは安元3年(1177)四月の閑院内裏においてであること、(b)大内守護に関しては、系図類では10世紀末から11世紀初頭に活動した摂津源氏源頼光の段階から始まったかのように記されているが、一次史料で確認できるのは12世紀半ば以降の源頼政の活動からであり、二条天皇のもとで整備され、安元2年には大番役として整備されていた可能性があること、(c) 院御所警固に関しては、Ⅰ・Ⅱの時期に大番役が整備された形跡は存在しないこと、である。 以上の成果は、平安末期における「源氏平氏」の軍事貴族から構成される都の武士社会を考えるうえで重要な論点であり、今後はこの成果を前提に、治承・寿永内乱期の変動と鎌倉幕府による大番役の整備過程を詳細に検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の平成27年度は、京都大番役の成立・展開に関連して、Ⅰ平安末期、Ⅱ治承・寿永内乱期(文治年間以前)における(a)里内裏警固、(b)大内守護、(c) 院御所警固という3種類の警固役について、史料検索を集中的に行い、Ⅰの時期の史料収集はほぼ終了した。2年目の平成28年度は、Ⅰの時期の収集史料をパソコンの表ソフトに入力し、一覧表に整理して分析する作業を進めるとともに、Ⅱの時期の史料検索を完了して、Ⅰの時期と同様に一覧表に整理する作業を始める。平成28年度は、パソコンでの入力作業を効率的に進めるため、大阪大学文学研究科の大学院生1名を研究補助者として雇用する予定である。 また平成28年度は、新たにⅢ鎌倉前期(建久年間から承久の乱まで)、Ⅳ鎌倉中後期について、(a)(b)(c)を明確に区別しながら、史料収集を進める。Ⅲの時期では、『玉葉』『明月記』『三長記』などの古記録や『百練抄』『吾妻鏡』『鎌倉遺文』『大日本史料』などの編纂記録・古文書類を検索し、承久の乱にいたる時期の大番役関連史料を収集していきたい。Ⅳの時期では、『明月記』『平戸記』『民経記』『経俊卿記』などの古記録や、『百練抄』『吾妻鏡』『鎌倉遺文』『大日本史料』『中世法制史料集 鎌倉幕府法』などの検索を進めるとともに、大番武士が登場する『古今著聞集』などの説話集にも目を通して、関連史料を広く集めたい。史料の検索は前年度と同様に私自身が行う予定である。 平成28年度は、鎌倉の鎌倉番役の警固対象となった将軍御所跡や、平成27年度に引き続き九州の異国警固番役関係地の現地調査を行う予定である。 平成29年度は、2年間の研究成果を踏まえて、Ⅰ~Ⅳの時期の史料の収集・整理を完了させるとともに、京都大番役の成立・展開について実態分析を深め、最終年度の平成30年度には、総合的な見地から成果をまとめ、公表する作業を進めたい。
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Research Products
(2 results)