2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02838
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
児島 恭子 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (90709289)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 巨木 / 信仰 / 中世 / 母乳 / 女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨樹と人間の関係史のなかでも特異なイチョウ巨樹信仰の歴史を明らかにすべく、研究協力者とともに乳信仰の様相を調査した。平成27年度に調査したのは以下にある対象木である。兵庫県朝来市乳ノ木庵・豊岡市大生部兵主神社・丹波市常龍寺・多可町青玉神社、広島県福山市吉備津神社、京都府米原市了徳寺・米原市諏訪神社、福井県小浜市若狭姫神社・おおい町日枝神社・敦賀市金山彦神社・鯖江市三峯・勝山市白山神社、青森県青森市姥神社・青森市山寺跡・東北町新舘八幡神社、岐阜県高山市国分寺、千葉県市原市若宮神社・市原市飯香岡八幡神社、和歌山県みなべ町丹河地蔵堂・九度山町北又、奈良県御所市一言主神社、埼玉県飯能市高山不動・東松山市岩殿観音・都幾川町関堀・松伏町大川戸八幡神社・和光市長照寺・川口市峯八幡宮。 これらの事前に文献等により乳信仰があるとされていたイチョウのなかには、一般的なイチョウ信仰の解説としてそう記されているだけで、実際には信仰がなかったとみなされるものがあり、注意が必要であることがわかった。いっぽう、かつて乳信仰があったことが遺物等で確認できるところもあったが、実態についてはすでに聞き取りが不可能になっていたところが多い。 丹波市常龍寺や鯖江市三峯などのイチョウ巨樹は、中世の山城(と関連する寺)に守護木として存在し、廃城・廃寺になった跡に存在し続け地元の住民に守られてきた巨木で乳信仰に移行してきたと考えられる例であり、九度山町北又をはじめとするタイプは、今は過疎の山村の一角であるがかつては重要な交通路であったところにおそらく宗教者によって植えられたものがひっそりと残存している例など、これまで言及されなかった歴史的意義についての仮説を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、事前の文献等の検討によって、対象とする必要がないと判断したり、交通の都合で行けなかった所があった反面、予定外で調査が必要な巨樹が見つかったり、次年度の予定を前倒しして実施することができたなど、件数は多く実施できた。 集落の住民にイチョウ巨樹の認識について聞き取りを試みたが、予想はしていたが山村では古老が亡くなり、集落が過疎になったことによって信仰の実態はつかみにくい。 また、出張日程が土日月にならざるをえなかったため、役所(教委)の休日や郷土資料館・博物館、図書館の休館日にぶつかるなど、文献調査は時間がかかるため、万全な調査ができたとはいいがたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、未見のイチョウ巨樹の現地調査を行うとともに、平成27年度の成果として行きついた仮説を念頭においた調査に時間を割きたい。
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