2016 Fiscal Year Research-status Report
古代日本と渤海中期王権の交流と流域遺産に関する歴史環境学的研究
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15K02840
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
藤井 一二 城西国際大学, 国際人文学部, 客員教授 (00139742)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 黒龍江流域 / 渤海王城 / 上京龍泉府 / 中京顕徳府 / 図們江流域 / 渤海使 / 北陸道 / 渤海路 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度から進めてきた中国東北の黒龍江流域の渤海王城と八世紀段階の日本との交流に関する資料収集・整理の小括と中間報告としての成果公開に努めた。その ため本年度は、①平成28年5月(東京)・同29年3月(大連)において、研究進捗の点検・小括の報告会と活動成果の確認を中国の研究協力者を交えて実施した。まず5月9日(月)に、来日した王禹浪教授(大連大学教授)や黒龍江省立黒河学院科研処スタッフと研究協議の場(於東京)をもち、中国東北の松花江・牡丹江・黒龍江流域の古代多民族文明と文物展示博物館の開示状況について資料提供を依頼した。 代表者(藤井)は2016年9月15-18日、中国黒流江省黒河学院主催の“黒龍江流域の歴史文化”に関する国際学術論壇において招待講演を依頼され、「日本史書中の中国東北史記録」を中心として①日本史書中の「中国東北史記録」、②中国史書中の「粛慎」「靺鞨」記録について報告した。その中で渤海の前史を理解する上でポイントとなる「粛慎」について旧粛慎国の地は高句麗以北の地を指し、6・7世紀の日本では「粛慎」と表記するが、日本では8世紀中頃まで同地を「靺鞨国」とも併記したこと、しかし同国の呼称は日本では8世紀を通じて「渤海」と「高麗」国名が主流となり、「靺鞨」名の表示は衰退したことを指摘した。また王禹浪教授から提供された「渤海・日本交渉関係参考文献」「黒龍江流域渤海古城地理分布目録」を収載した中間報告書Ⅰ『東アジアの交流と文化遺産-黒龍江・図們江流域の渤海遺産データ』を印刷し、2017年3月末の訪中(大連)において大連大学・大連民族大学・旅順博物館等の研究者との協議・交流会に提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定した活動成果として、①情報誌『ニューズレター』15号と、②中間報告書Ⅰ『東アジアの交流と文化遺産―黒龍江・図們江流域の渤海遺産データ』を刊行した。そこでは、平成27-28年度における活動の歩みを記録、確認するとともに、前年度から協力依頼している中国における渤海史研究の参考文献データと黒龍江流域(牡丹江・鏡泊湖・松花江等)・図們江流域(布尓哈通河・海蘭河等)に分布する渤海古城分布一覧表を掲載することができた。次いで今後に向けて、同流域に分布する渤海墓葬一覧表を作成する目途がたった。 また、これまで推進してきた渤海国と古代日本の交流研究は、著書『天平の渤海交流』(塙書房)への関心から黒龍江流域の歴史文化を論題とする国際学術論壇に招聘され、同大学の客座教授として平成29年秋の第2回論壇での招待講演も内定した。この国際学会は2017年9月末に予定されている。一方、図們江の流域に位置する渤海中期王城との交流に関する資料整理を進めているが、目下整備中の中京顕徳府址(和龍市西古城)・東京龍原府址(琿春市八連城)の整備・公開時期が未定のため、文献資料の収集に力点を置くこととし、平成28年度に予定していた渡航・移動・滞在・会議・調査協力等に係る予算は次年度に繰り越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施した活動成果(資料整理・執筆)と次年度へ延期した現地巡見の課題を再点検し、活動の成果を『ニューズレター』16号で公表することと、進行中の論文執筆を完成させる。平成29年8月に研究協力者の王教授らを日本に招聘し2か所でシンポジウムを開催すること、継続中である黒龍江流域の資料館(黒龍江省・吉林省)において、流域遺産の参観・撮影・資料収集を行う。9月末予定の中国・黒河市の学術論壇において「古代日本と黒龍江流域の文明連動」(仮)をテーマとする学術講演を行う準備をする。 また、代表者(藤井)は「渤海中期王権と古代日本の交流―渤海王城遺産を中心にして―」(仮)と題する論文を執筆するとともに、これまでの調査・活動の成果と課題を取りまとめ、その概要を発信するために、ニューズレター・ホームページと報告セミナー(日本・中国)を準備する。更に図書については、研究協力者の論文・遺産データを含む論集として、共同著作『古代日本と黒龍江流域の文明遺産―交流の古代史―』(仮題)を刊行し、東北アジアにおける渤海遺産の調査・研究の成果を発信する。
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Causes of Carryover |
当初、2016年度に予定したホームページ作成について、2016年度末に作成した中間報告書『東アジアの交流と地域文化』に収載した黒龍江流域の渤海遺跡データを採録・公開するため編集作業が次年度になったこと、また、入手が遅くなった『中国文物地図―黒龍江省―』の渤海時代遺産解説の中文翻訳依頼と、吉林省・黒龍江省の渤海遺跡巡見が現地の遺跡整備状況(公開時期)との関係から、次年度の実施計画に組み入れることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究費用は①研究協力者(複数)等の流域遺産に関する中文レポート・論文原稿の翻訳を専門家に依頼する。②平成27・28年度の成果を踏まえて「東アジアの交流と文化遺産」に関する共同論集を発刊する。③大連民族大学・黒河学院・黒龍江省民族研究所において研究報告会を開催する(代表者の藤井は大連民族大学・黒河学院の客座教授を兼任している)。 ④日本各地で中国東北の渤海遺産を紹介するため、「渤海王権と古代日本の交流」に関する国際研究集会(シンポジウム)を開催する。その準備・成果をニューズレターとホームページで発信する。⑤日本・中国における近年の関係図書・資料を購入する。
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Research Products
(2 results)