2017 Fiscal Year Research-status Report
古代日本と渤海中期王権の交流と流域遺産に関する歴史環境学的研究
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15K02840
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
藤井 一二 城西国際大学, 国際人文学部, 客員教授 (00139742)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黒龍江流域 / 渤海王城 / 上京龍泉府 / 中京顕徳府 / 図們江流域 / 渤海使 / 北陸道 / 流域遺産 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成27年度から進めてきた図們江・黒龍江流域の渤海王城と八世紀段階の日本との交流に関する資料収集・整理を踏まえて、中間報告としてこれまで集積した参考文献(データベースト)と活動成果の公開に努めた。その主な内容として、A:ホームページ『東アジアの交流と文化遺産』を制作し(2018年5月web開示)、主なコンテンツとして、①遺産探訪(中国東北の流域遺産・博物館をめぐる)、②画像でたどる黒龍江・牡丹江流域の文化的景観、③データベース「渤海・日本交渉関係参考文献」を採録した。B:平成29年10月、日本国内に残存する渤海国に関する金石文資料のうち、最古で最北に位置する宮城県多賀城址(国史跡)の「多賀城碑」と古代東北(出羽・陸奥)を統括する行政・軍事拠点である多賀城址の現地調査ならびに画像の収録を行った。当該石碑(高さ2m×幅1m)中の「靺鞨国」部分は多賀城市埋蔵文化財センターにおける実物模造碑が碑文内容の吟味に有益であって、石碑を建立した天平宝字6年(762)の段階に渤海国が「靺鞨国」の名称としても呼称・表記された基本資料として確認した。C:平成29年11月22日~25日に中国大連市で開催された「国際学術検討会」(大連民族大学東北少数民族研究院主催、中国・日本・ロシア・モンゴルの招聘研究者)に出席し、代表者(藤井)は「シルクロードと日本古代の民族交流―唐代を中心として―」と題して報告(中文)した。この中で7~9世紀の日本・大陸間の交渉において、7世紀後半は遣唐使の帰国、8世紀前半は新羅・唐・渤海との多元的交流が顕著であり、その中にあって渤海中期王権が日本―唐を結ぶ回廊において補完的機能を果たしたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年3月に刊行した中間報告書『東アジアの交流と文化遺産―黒龍江・図們江流域の渤海遺産データ』を基にしてホームページ案を制作し、現在、5月の公開を目途にトップページに入れる本年度主要行事の調整を行った。そのコンテンツは、①トピック、②研究の目的・背景、③甦る渤海遺産、④遺産探訪(中国東北の流域遺産・博物館)、⑤画像でたどる黒龍江・牡丹江流域の文化的景観、⑥データベース(渤海・日本交渉関係参考文献)、⑦主要著作からなる。これによって渤海史研究の参考文献(日本・中国)と黒龍江流域(牡丹江・鏡泊湖・松花江等)・図們江流域(布尓哈通河・海蘭河等)に分布する渤海古城分布一覧を広く活用することが可能となった。 また、同年11月に大連市で開催の「中国東北地域の民族・文化」に関する国際学術論壇に招聘され、大連大学客座教授として「北方のシルクロードと東北アジア地域の民族交流」を内容とする発表を行い、唐・渤海・日本を結ぶ交流回廊を「北方のシルクロード」と位置付けた。平成29年度中に予定していた日本国内でのシンポジウムは、研究協力者の転任等により次年度に繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに蓄積した活動成果(中間報告書・ホームページ・資料整理)を再点検し、継続中の中文データ(論集原稿・流域遺産解説)の翻訳(外注)作業を推進するとともに、執筆中の論文「古代日本と渤海中期王権の交流」を完成させる。次いで、平成30年9月末開催の「第3回黒龍江流域文明学術論壇」(代表者は黒河学院客座教授)において研究成果を報告するとともに、同時期にハルビン・牡丹江市における博物館(黒龍江省博物館)と関係遺産(上京龍泉府遺址)の近年における整備・復元遺跡を参観する。 また、進行中の共同論集用の寄稿論文(中文・日本語併記)と代表者(藤井)の論文を含む冊子を刊行するため、執筆作業の加速を図る。これらの成果は、11月初旬に開催予定の学術シンポジウム(東京会場予定)において研究活動の成果と課題を討議し、その概要はホームページでも紹介する。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度までに予定した中国語論文・辞典項目解説に関する日本語翻訳の作業準備が次年度に移行したこと、研究協力者の転任(大連市から黒河市へ)等により日本招聘と代表者の訪中時期、現地同行日程の立案に際し流動的要素が大きかったことによる。 (使用計画)平成30年度の研究費用は①研究協力者(複数)等の流域遺産に関する中文レポート・論文原稿の翻訳を外注する。②平成27年度以来の成果を踏まえて「東アジアの交流と渤海遺産」に関する報告冊子を刊行する。③昨年度に印刷した『東アジアの交流と文化遺産』の成果を紹介するため、日本・中国において講座ならびにシンポジウムを開催する。④これらの活動内容を効果的に紹介するため、ニューズレター(現在16号)とホームページ(随時、更新)を活用し発信する。
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Research Products
(1 results)