2015 Fiscal Year Research-status Report
古代西摂・東播における地域編成の歴史的重層性-中央権力と畿内外縁部-
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15K02847
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
高橋 明裕 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (90441419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂江 渉 神戸大学, 人文学研究科, 非常勤講師 (00221995)
市澤 哲 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30251862)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内陸河川交通 / 街道 / 中世寺院 / 中世城館 / 畿内外縁部 / 広域的地域権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研チームとしては現地調査を兼ねた研究分担者調整会議を1回(準備会合を1回)、ほかに現地調査を文献チームとして7月に1回行った。平成27年度は武庫川水系を中心に研究を進めるとの研究計画にもとづき、丹波街道から山陰道沿いを巡見する目的で丹波篠山を拠点に研究会を兼ねた研究分担者会議及び現地調査を8月に行い、今後の研究計画について議論・調整を行った。研究代表者の高橋明裕は報告「明石郡・賀古郡・印南郡の古代―「風土記」と「神代記」から見た―」において『住吉大社神代記』にみる播磨における神領の分布状況を、研究分担者の坂江渉は報告「「H型」交通路における地域編成-志染屯倉と蘇我氏ー」において6-7世紀における蘇我氏による屯倉経営と六甲山北麓-山陰道との関連を、同じく市澤哲は報告「中世における西摂津・東播磨の交通を地域秩序-明石郡を中心に-」において中世寺院文書にみる明石川水系ルートの役割について報告した。現地踏査では篠山市八上城址など山陰道ルートの城塞と三木市吉田住吉山遺跡及びその付近の美嚢川流域の交通と城塞の関係について実地調査を行った。 また当科研の研究協力者も参加する明石市史古代中世史合同部会を軸とした東播西摂研究会と合同し、11月に研究分担者の坂江が「美嚢郡の御坂神社・志染屯倉と東播・西摂の交通路」を報告するとともに、中世城館の研究者から報告「東播・西摂の交通路と城館」を得た。 以上をもとに高橋は『住吉大社神代記』の神領分布についての研究成果を、坂江は交通の要衝である坂・宿に着目した神の鎮座伝承の神話分析を、市澤は中世寺院文書の分析にみる明石川流域の諸勢力の交流について研究成果を公表した(研究発表の項参照)。このほか、高橋は前掲の研究報告をもとに『播磨国風土記』のナビツマ伝承の分析を通じて印南野丘陵に注目した研究を公表した(研究発表の項参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画に示した武庫川水系を中心とした諸街道のうち、丹波街道から山陰道につながる地域について現地調査を実施できたとともに、湯山街道沿いの美嚢川水系をも踏査を行うことができた。その際、三木市吉田住吉山遺跡の踏査をきっかけに東播・西摂の交通路沿いの中世城館の分布に着目した結果、中世城館の研究者の報告を得ることができたことは有益だった。各水系沿いの中世城館の分布・交通路研究と研究分担者市澤哲が担当する中世寺院との関連の追及は有効であるとの展望をもつことができた。これにより、本来の計画では平成28年度に研究する予定であった志染川ルート、押部谷、明石川流域、美嚢川ルートについての研究に初年度着手することができ、研究を順調に進展させることができた。また、印南野台地上の交通・水利、魚住泊に関する研究にも先鞭をつけることができた。 一方、中世の遺跡・史料が明らかにしている地域編成の重層的歴史性を古代の遺跡等から検証する作業は遅れている。資料の残存の度合いに規定される側面はあるにしても、初年度に予定していた武庫川水系の宅原遺跡などに着目しての部民・氏族分布の分析は平成28年度に進捗させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
古代史チームにおいて、研究代表者の高橋明裕は武庫川水系の部民・氏族分布の分析の一環として、日下部に関する先行研究を踏まえ、摂津・丹波・但馬をも視野に入れた研究に着手する。また、今年度の研究成果として、印南野の開発に関与した大伴氏などの勢力が加古川水系沿いに展開したとの知見をさらに深め、畿内周縁部における大伴氏の勢力の動向に着目して研究を進める。研究分担者の坂江渉は交通の要衝としての坂及び中世の宿にも視野を広げて研究を進めていく。高橋・坂江の古代史担当は共同して古代の遺跡分布からの知見を得ることに努め、横穴墓の播磨への導入などから渡来系氏族の動向の把握に努める。 中世史担当研究分担者の市澤哲は中世寺院の存在形態、寺院所蔵史料の調査をさらに進める。その際、山田荘を通過するルートについてはさらに多角的に検討をしていく必要がある。
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Causes of Carryover |
本研究に関連する『日本古代・中世都市論』(吉川弘文館、2016年4月刊)の出版情報があり、2016年4月刊行とのことからその購入代を平成28年度分に回すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の情報機器類を中心とした物品購入から、平成28年度は旅費、謝金に加えて専門書・史料類の購入に力を入れていく。とりわけ畿内における物資流通、山岳信仰を含む畿内を中心とした宗教・信仰に関する諸研究、古代史の史料集及び専門書の購入に力を入れていく予定である。その一環として次年度使用に回した金額を2016年度刊行分の書籍購入費の一部として使用していく計画である。
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